--他に知っておかなくちゃならないことは?
そうだね、PINがサインよりも本当に安全かどうかについては、まだ盛んに議論されているんだ。PINの方がサインより探り出しやすいと言う人もいる。キーパッドでPINを入力している人の後ろからのぞいて、番号を知ることだってできる。もちろんPINだけでは損害は発生しない。詐欺をしようとしている人物は、カードも手に入れる必要がある。また、2つのうちでサインの方が安全でないと主張する人たちは、その理由として特に、多くの店員は支払い時に、実際にサインを調べたり、カードのサインと比べたりしないことを挙げている。
--Chip and PINを使う必要があるの?
外国の銀行カードやクレジットカードとか、Chip and Signature(チップと署名の併用型)カードなどの別のチップ入りカードを持っていないのなら、PINの4桁の番号を覚える必要があるだろうね。
--じゃあ、Chip and PINは当初期待されたように詐欺を一掃できたの?
イギリスの支払決済機関であるAPACSは、Chip and PINの導入以来、これが詐欺の減少に大きな効果があったと述べている。イギリス国内のカード詐欺は、Chip and PINの導入に続く1年間で13%減少し、その翌年にはさらに3%減ったということだ。
偽造カードによる詐欺も2005年には24%減少し、2006年には、小売店でのカード詐欺が何と47%も減ったんだ。つまり、Chip and PINが導入されてから2年間で、損害額が1億4670万ポンド減ったことになる。APACSは、切り替えの結果、買い物客は前より安全になり、盗まれたはずの数100万ポンドが詐欺師の手に渡らなかったと言っている。
--「しかし」という言葉がそろそろ出てきそうだね。
そのとおり。カード詐欺は全体としては減少したんだけど、統計では、オンライン詐欺、電話詐欺、通信販売詐欺などのカードが介在しない(Card-Not-Present:CNP)詐欺が急増していて、2005年のオンラインバンキング詐欺は倍増したことがわかった。
今では、カード詐欺による損害額全体のうち、CNP詐欺が約50%を占めていて、オンラインバンキングの損害額は44%増加している。APACSはこの手の詐欺が比較的新しいせいだとしており、皆がもっと注意するようになるまで、こうした詐欺は増え続けるだろうね。