マイクロソフトの仮想化戦略--仮想化技術をひも解く(6) - (page 2)

谷川耕一

2007-08-08 08:00

サーバ仮想化は幅広いプラットフォームをサポート

 一方、サーバの統合でリソースを効率的に活用したい場合は、サーバの仮想化が有効な手段となる。現状では、Microsoftはサーバ仮想化ソリューションとして、ホストOSの上で動く仮想化ソフトウェアVirtual Server 2005 R2を提供している。最新のSP1では、Intel-VTやAMD-Vにも対応し、安定性が増した。

 また、次期サーバOSであるWindows Server 2008の出荷から180日以内には、ハイパーバイザー型の仮想化ソフトウェアとなるWindows Virtualizationを提供する予定だ。Windows Virtualizationでは、実行中の仮想マシンを別のホストに移動するといった一部のハイエンド向け機能などが初期段階では実装されない。

 「例えば、他社の仮想化ソフトウェアでは動作保証のために認定マシンが限定されている。これは仕方がないことだ。対してMicrosoftでは、幅広いプラットフォームを戦略的にサポートしていくことに注力したため、一部機能の実装の優先順位を下げることにした」(藤本氏)

 また、Windows Virtualizationの稼働環境は、64ビットアーキテクチャだけだ。32ビットのx86アーキテクチャについては、引き続きVirtual Serverでサポートする。x86のプラットフォームでは、すでにTVチューナーボードなどの特殊デバイスも数多く動いており、Microsoftでサポートできる領域を超えてしまうという。それらについては、ホストOSのデバイスドライバなどで一旦ハードウェアの違いを吸収し、それにより幅広いプラットフォームをサポートする。

 もちろん、Windows Virtualizationのベース環境が64ビットというだけで、ゲストOSはWindows NT 4.0やWindows2000なども稼動することになる(ただし、技術的に稼動することと、ライセンス的に動かしていいかは別問題だ)。

Windows Server 2008のサーバコアを管理用に利用

 Windows Virtualizationはハイパーバイザー型の仮想化ソフトウェアであり、その構造はVMwareよりもXenに似ている。ハイパーバイザーだけが動くのではなく、仮想化環境の管理用にWindows Server 2008のサーバコアが1つ必要になるのだ。

 「仮にセキュリティホールがハイパーバイザーで発見されたとしても、管理用のWindows Server 2008を通じてWindows Updateで対応できる。ハイエンドな用途だけでなく、誰もがサーバ仮想化を使えるようにするには、他のWindows OSと同じような手法で管理できる必要がある」(藤本氏)

 仮想化の利用で全く新しい管理手法が必要となるのでは、手間を増やすことになりかねない。そこでサーバコアを提供し、従来と同様に管理できるようにしたのだ。仮想化ソフトウェアは、軽くしようと思えばかなり軽いものが開発可能だが、いくら軽くて動作が速くても大きなリスクを抱えることになりかねない。管理を容易にすることも、仮想化の活用で重要な要素となる。

仮想化をもっと広く捉えてほしい

 気になるLinuxへの対応については、「消極的だと見られがちだがそれは違う」と藤本氏。Virtual Server 2005 R2では、米国ですでにサポートOSにいくつかのLinuxディストリビューションがリストされている。日本では、例えばLinux上の日本語変換ソフトなど日本特有の対応をどうするか検討している最中だという。

 仮想化の利用で何か問題があった場合に十分対応できる企業なら、むしろ新しい環境にアプリケーションを移植する体力もあるだろう。または、リスクを承知で仮想化環境を利用するかもしれない。しかしながらそこまでの体力やリソースを持たないユーザーにも仮想化技術を利用してもらうには、サーバの仮想化だけでは解決できない課題も多い。顧客の資産を守る観点からは、冒頭で示した4つの仮想化をうまく組み合わせて利用すべきであり、仮想化=サーバの仮想化とはならないのだ。仮想化を幅広い技術トレンドとして捉えるべき、というのがMicrosoftの考えだ。

 仮想化環境でのセキュリティやコンプライアンスリスクをユーザーが理解するにはまだまだ時間がかかる。さらに、ISVなどがマルチCPUやマルチコア環境で仮想化を利用した際に、どのようなライセンス形態となるかを明確にしていないといったこともあり、爆発的に仮想化技術が普及することはないのではと藤本氏は言う。逆にこれらの課題が解決すれば、一気に仮想化が普及する可能性もある。その際には、サーバの仮想化だけではなくアプリケーションの仮想化など、さまざまな仮想化技術をユーザーは適切に選択する必要がありそうだ。

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