NGN(Next Generation Network:次世代ネットワーク)という言葉を耳にするようになって久しい。NGNは、既存の通信ネッワークを発展させ、IPネットワークを使って「インターネット」「電話」「テレビ」のトリプルプレイサービスを提供しようというものだ。今回の特集では、このNGNを中心とした各企業の動きを探ってみたい。
まず特集第1回目は、NGNの概要とその最新動向、将来の展望などをガートナー ジャパンのリサーチ コミュニケーションズ バイスプレジデント 田崎堅志氏に聞く。
NGNとは「IP化」と「階層化」
――まず、NGNとは一体何を指しているのか、わかりやすく教えてください。
NGNは、IPプロトコルで統一されたネットワークを実現するための取り組みです。このネットワークでは、インターネット、固定通信網、移動通信網および専用線などのネットワークが階層構造になっています。これまで縦割りだったネットワークを階層化することで、さまざまなネットワークを統合的に利用できる環境を実現します。
また、総務省や通信業界は、NGNの次のステージである新世代ネットワークを開発しています。たとえば、波長の違う複数の光信号を同時に利用することで、光ファイバーを多重利用するDWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)技術や、光ネットワーク上の光信号を電気信号に変換することなく、直接ルーティングするGMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switching)技術を活用し、ネットワークのトラフィック増大に対応するL1VPN(Layer 1 Virtual Private Network)技術などは、IP化を実現することよりも高度なテクノロジです。
NGNは、さまざまな特徴を持っていますが、私がIP化と階層化にスポットを当ててお話しする理由は、NGNと新世代ネットワークの範囲を厳密に規定することが困難になっているためです。
――ITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)がNGNに関する勧告を制定しているとのことですが、その進行状況はどうなっていますか?
NGNの最初のステップであるリリース1では、オールIP化を実現するIMS(IP Multimedia Subsystem)の技術をベースに、多種多様なマルチメディアサービスを提供するためのフレームワークが発表されました。現在は、リリース1の拡張と、NGNの詳細なプロトコルやインターフェイスの要求条件を決定していくリリース2の段階です。
――NGNが注目される背景はどこにあるのでしょう。
NGNは、コスト削減とテクノロジの高度化を狙いとしています。NTTは、「Skype」をはじめとするインターネット網を利用した通話サービスの登場や、携帯電話の普及などにより、固定電話から得る通話料収入が大幅に減少しました。そこで、電話網をオールIP化し、運用コストを削減するためのインフラ整備に乗り出した経緯があります。