――NGNで実現できることを教えてください。
NGNでこれまでと大きく変わるのは、ネットワークの接続先をユーザーが自由に変えられることです。たとえば、移動通信ネットワークは、無線アクセスネットワークとコアネットワークで構成されていますが、これらを切り離した階層構造にすれば、ネットワーク事業者はアクセスネットワークを構築するだけで事業が始められるのです。
既存の電話線や携帯電話網、専用線など、ユーザーが使用できるネットワークの選択肢はこれまで限られていましたが、今後はWiMAX、ワイヤレスLAN、次世代PHSなどの新しいネットワークとも相互に接続できるようになるでしょう。これまでネットワーク事業者しか使えなかった機能をユーザーも使えるようになる。これは、ユーザーが適材適所にネットワークを切り替えて使用できることを意味します。
また、NGNはインターネットが抱えるネットワークセキュリティの問題を解決することも狙いとしています。セキュアな通信環境を実現し、QoS(Quality of Service:サービス品質)が保てるのです。
――NGNの登場によって、インターネットの今後はどうなりますか。
ネットワークをピラミッド構造にたとえてみましょう。縦軸に信頼性、横軸にリーチ(使える人の数)ととります。セキュアで、信頼性の高いネットワークは、頂点付近のクローズされた位置に属します。オープンネットワークであるインターネットは、ピラミッドの下部に属するので、当然、セキュリティや通信品質は落ちてしまう。NGNは、セキュリティを保ちながらインターネットが有する自由度も確保しようとするテクノロジであり、すみ分けができています。
――NGNがユーザーである個人や法人に与えるメリットは何でしょう。
ネットワークの接続先が明確になるので、セキュリティ面で信頼性が確保できること、帯域を整備することで、インターネットに比べ、ハイクオリティな音声や画質サービスを享受できること、さまざまなネットワークを必要に応じて設定し、切り替えて利用できることなどがメリットです。
日本で注目されるNGN
――海外のNGNに対する取り組み状況を教えてください。
ヨーロッパでIP化に取り組んでいる国は少なく、2001年ぐらいから、英国のBritish Telecomが音声ネットワークをIP化しています。米国は、ケーブルテレビのベンダー間における競争がし烈で、ネットワークのインフラをIP化することにそれほど注力しておらず、ガートナーの中でもNGNに関するレポートはほとんどありません。日本の動きは先進的だと言えるでしょう。
――NGNが日本ベンダー各社の注目を集めている理由は何ですか?
NTTが始めるNGNをサポートすることの意志表明と言えるでしょう。新インフラの登場は、ベンダーにとっても絶好のビジネスチャンスになるので、アピールする必要があります。