「原点から未来へ良い仕事」をスローガンに意識改革を継続--三井物産 - (page 2)

宮本利明

2007-11-27 15:51

 従来は部署ごとの利益を競争させて、100%の成果主義を行っていた。しかし現在は、この数字に表される定量の評価が20%、残り80%を定性評価としている。この定性評価を一言で表すと「良い仕事をしているか」の評価になる。

 ここでいう「良い仕事」とは何か――。それは現在の槍田社長が就任以来、あらゆる場面を通じて社員に呼びかけてきた言葉が指す「志を高く、目線を正しく、世の中の役に立つ良い仕事を積み重ねよう」に端的に表されている。

三井物産らしい社会貢献活動

 本業につながっている関連領域で活動するのが、昨今の社会貢献活動の流れとなっている。しかし、三井物産の場合、以前からこの考えで活動を行っている。

 同社は日本の民間企業で3番目の「森」持ち企業である。明治時代から旧三井物産が木材事業のために取得してきたもので、全国で73カ所に合計で4万4000ヘクタールを社有林として保有しているという。この面積が吸収・固定するCO2(二酸化炭素)は年間約18万トンにもなるとしている。また、林野庁が発表した2006年の資料を基にすると、同社社有林の公益的機能(水源、土砂流出/崩壊防止、大気保全など)の評価額はおよそ年間1200億円と試算される。

 また、同社とブラジルのつながりは密接だ。さまざまなビジネスを通じたパートナーシップが、在日ブラジル社会への貢献につながっている。ブラジルからの入国者は年々増加し2005年末現在、在日ブラジル人は30万人を超え、その多くの家庭は、言語や生活習慣の違いから子弟教育に深刻な課題を抱えている。

 この社会問題を少しでも改善するべく、同社は2005年から「在日ブラジル人子弟教育支援活動」を継続している。母国語(ポルトガル語)と日本語の両方の習得が遅れている子どもたちのために、日本語習得用の教材を開発し、ネットに公開している。このほかにも、ブラジル人学校の学習用備品の寄贈、ブラジル人コミュニティーの支援活動をしている特定非営利活動法人(NPO)の支援など、在日ブラジル社会の課題解決に向けて一企業として真摯に取り組んでいる。

CSRはリスク管理からビジネスチャンスへ

 三井物産はグローバル規模で多岐にわたる事業を通じて、さまざまな社会的課題に接している。国際社会の問題解決に積極的にチャレンジしていくことは大きな課題だ。「CSRはリスク管理からビジネスチャンスへとシフトしていくものだ」と、三井物産 CSR推進部部長の山本氏は言いきる。

 先述の「特定事業管理制度」などリスクマネジメントをしっかり行う一方で、「良い仕事」の創出、実践を目指した社員の意識啓発も継続している。引き続き、経営理念に基づき会社と社員のベクトルを合わせながら、三井物産らしいCSRの在り方を追求していく。

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