同社の試算では、会計のパッケージ版購入の場合とSaaS版を5年間利用した場合、SaaSでは100万円程度のメリットが生じるとしている(図2)。だが、利用時間は午前7時から深夜0時までの17時間に限られ、それ以外はデータベースのバックアップを取るための時間に充てられる。サーバを事業所内に設置することが難しい企業や、拠点展開での初期投資を抑えたい企業向けの商材のひとつという位置付けだろう。
5月からの第1次ステップは、既存パッケージ製品利用企業を対象に160社までの範囲でSaaSの利用を受け付ける。その結果を基に、再度ビジネスモデルを実証し、パートナー企業や他の企業とSaaS拡大を検討していくという。
国も中小企業のIT化促進にSaaSを推進
フォーラムの特別講演では、週刊BCN編集長の谷畑良胤氏が登壇。今後の日本におけるSaaS化の必然性について具体的な論拠を示した。
日本の中小企業におけるIT化比率の遅れ、特にPC稼働率は欧米の半分、ベネズエラ並みだという現状に対し、「今年は中小企業のIT化の基点になる年」と話す谷畑氏。その原動力となるのが、経済産業省を中心に施策が進む中小企業IT化戦略や、申請・納税・申告といった電子化、そしてSaaS化の流れだという。
経済財政諮問会議の成長力加速プログラムやIT戦略本部のIT新改革戦略政策パッケージでは、中小企業のIT化を促進するためにASP/SaaSを推進。また、国税電子申告・納税システム(e-TAX)の利用は、2006年度の10万件から2007年度の38万件へと急増。中小企業のネットワーク化に強制力が加わるようになっているという。
国内大手ベンダーもSaaSへの取り組みが進む。富士通は主力のデータセンターを中核としたSaaS基盤を構築。日本IBMは米国iDCを活用し、ISV向けにホスティング方式でのSaaS事業を展開する。出遅れた感のあるNECも業務アプリをSaaS型で提供する事業に着手すると表明している。
縮小する収益を補う新サービスの開発が必要
「今後SaaS化が進むと、ITベンダーのビジネスモデルも大きく変る。従来のコンサルティングやサポート、ネットワーク構築といった収益構造部分が縮小し、その部分を補う新サービスの開発が求められる」と谷畑氏は語る。
今後、企業のサービス指向アーキテクチャ(SOA)戦略の拡大や次世代ネットワーク(NGN)時代の到来で、大手開発系SIerやネットワーク系販社(NIer)、業務アプリケーションベンダーが融合し、SaaS/ASPプロバイダを形成していくと予測する(図3)。
「受託開発ベンダーの存在意義が希薄になることで、ソフトウェア開発は淘汰される時代が来る」(同氏)