カスペルスキー、セキュリティ業界の再編には「技術で対抗」

冨田秀継(編集部)

2008-07-09 19:46

 ロシアに本拠を置くセキュリティベンダーのKaspersky Labが7月3日から4日にかけて、サンクトペテルブルグにおいて「International Partner Conference」を開催した。2000年に10カ国から19のパートナーが参加したこのカンファレンスは、2008年には39カ国140パートナーを集めるにまで至った。

 基調講演にはKaspersky Labの創業者の一人で、セキュリティ研究者でもあるCEOのEugene Kaspersky氏が登壇。同社の事業展開やセキュリティ業界、脅威の動向について、今後10年の見通しを示した。

カスペルスキー氏、ITセキュリティ業界を読み解く

Eugene Kaspersky氏 Eugene Kaspersky氏

 Kaspersky氏はITセキュリティ業界について、個別の脅威に個別の製品が対応しているのが現状だと指摘している。マルウェアに対してはアンチウイルス製品、迷惑メールにはアンチスパム、不正アクセスについてファイアウォールなどで対応しているというのだ。

 事実、企業買収という点では、1990年代はアンチウイルス企業が、2000年代はアンチスパイウェア企業の買収が目立ったという。

 では、次に求められるアプローチはどのようなものだろうか。

 Kaspersky氏は「技術」によって異なるアプローチが可能だという。今後、Sandboxなどの仮想化技術、ヒューリスティックなどのエミュレーション技術、コード実行の前後で悪意を検知するHIPS技術などが求められるだろうと語っている。

 こうしたアプローチの変化には、Kaspersky Labだけでなく業界もまた敏感に反応している。

 2007年はDLP(Data Loss Prevention:情報漏えい対策)ベンダーの買収が相次いだ。VontuはSymantecに、OnigmaはMcAfeeに、Provillaはトレンドマイクロに、TablusはEMCのセキュリティ事業部門RSAにそれぞれ買収されている。いずれも非上場企業であり、DLP技術・製品に特化した企業として業界ではよく知られた存在だった。

 各社が動きを示している中で、Kaspersky Labはテクノロジーフォーカスをより強めていきたい考えだ。

Kaspersky Labはテクノロジーに注力しながら機能の拡充を目指すという Kaspersky Labはテクノロジーに注力しながら機能の拡充を目指すという

セキュアOSが盛り上がらない理由

 「WindowsやMac OS、Linux/UNIXなどのモダンなOSは、柔軟ではあるがセキュアではない」と、Kaspersky氏はOSの現状を説明する。「なぜならば、顧客はOSにセキュリティよりも柔軟さを求めているからだ」という。

 その一方でセキュアなOSや環境も存在する。その一例として挙げられたのが携帯電話向けのアプリケーション実行環境「BREW」だ。しかし、Kaspersky氏は「BREWがセキュアなプラットフォームであることを、何人の人が知っているだろうか?」と問いかける。

 そのため、「セキュアOSは今後10年、盛り上がる見込みはないだろう」と結論づけた。

 Kaspersky氏はまた、BREWのようなセキュアな環境があってもなお、モバイルには危険がつきまとうとも指摘している。モバイル環境向けの新たなサービスが続々と登場することで、これまで以上に携帯電話を利用した金銭のやり取りが発生するからだ。そのため、今後10年のモバイル環境はPCと同等の深刻なマルウェア被害が予想されると警告している。

欧州市場に強みを持つカスペルスキー

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    ChatGPTに関連する詐欺が大幅に増加、パロアルトの調査結果に見るマルウェアの現状

  2. セキュリティ

    迫るISMS新規格への移行期限--ISO/IEC27001改訂の意味と求められる対応策とは

  3. セキュリティ

    警察把握分だけで年間4000件発生、IPA10大脅威の常連「標的型攻撃」を正しく知る用語集

  4. セキュリティ

    いま製造業がランサムウェアに狙われている!その被害の実態と実施すべき対策について知る

  5. セキュリティ

    ランサムウェア攻撃に狙われる医療機関、今すぐ実践すべきセキュリティ対策とは?

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]