ITの意味は?
ICTとITが実際にはほとんど同じ意味で使われているとして、それではITはどういう意味なのでしょうか?
世界初のコンピュータENIACは、弾道計算をするという軍需目的で開発されました。それが第二次世界大戦の終戦によって企業に使われるようになりました。当時コンピュータシステムは業務効率化を目的に使われてきましたが、M.E.ポーターが「競争の戦略」を発表したタイミング(1980年)から、企業は事業の展開にあたって戦略を強く意識するようになり、コンピュータもその戦略を実現する為のツールとしての大きな役割を担うようになっていきました。その流れの中で、1990年にJ.スタークが発表した「競争優位のIT戦略」の中でITという言葉が生まれ明確に企業はITを戦略的に活用すべきであると明言しました。
私なりにITを定義すると、
ITとは企業の競争優位を獲得する戦略を支えるコンピュータやネットワーク技術、およびその活用のフレームワークを含めた手段の集合体であるということになります。
ICT再考
ICTは実際にはITとほぼ同じ意味で使われているのが現実です。しかし、もう少し、ICTという言葉が生まれた時期を考えてみたいと思います。
ICTという言葉が公に出たのは、小泉首相の時代のu-Japan構想においてです。u-Japan構想では、ICTの定義がされています。
これから実現を目指すユビキタスネット社会においては、「人と人」のコミュニケーションだけでなく、「人とモノ」、「モノとモノ」のコミュニケーションも現実のものとなる。このように、誰でも何でも簡単にネットに接続することにより多様で自由かつ便利な「コミュニケーション」が実現するという点が最も重要な概念であることを踏まえ、情報通信におけるコミュニケーションの重要性をより一層明確化するために、u-Japan構想においては「ICT」の語が使用されている。平成17年度の政策大綱ではu-Japan構想を軸に体系化したため、これまで「IT政策大綱」としていたものを、本年度より「ICT政策大綱」と新たに位置づけることとした。 (「ICT政策大綱」より)
ここではCを新しいコミュニケーションの形と定義しています。ユビキタス社会自体の定義が曖昧ですしコミュニケーションも幅広い意味を持っていますので、どんなコミュニケーションかを推測することは難しいのですが、私の意見としては、第4回でご紹介したWeb2.0時代のコミュニケーションがCのひとつにあたるのではないかと思っています。SNSや口コミサイトといった消費者主導のコミュニケーションが事業戦略上無視できない存在となり、企業システムにどう取り組むかを真剣に考えなければいけない時代になってきたのです。その新しいコミュニケーションに対応可能なITをICTと呼ぶと考えてはいかがでしょうか。ITの基本的な意味が変わったのではなく、消費者が変化しITが進化したという考え方です。
ということで、ここではICTを次のように定義したいと思います。