意外と知られていないIT
最近の新入社員と話をしていると、「IT」という単語は身近なものになっているようです。ITベンチャー、ITバブルといった派生語に加え、ライブドアの堀江元社長のメディアの露出も手伝いより広く一般的に広く使われるようになりました。ヒルズ族は新しい時代の成功者の像となり、ヒルズ族=IT長者というイメージからIT=金が儲かるというイメージの方も増えたような気がします。
私が新入社員だった1990年代の初めにはITという言葉はあまり使われていませんでした。当時コンピュータシステムは、なぜか戦略、戦略と騒ぎ始め、意味もわからずに戦略情報システム(SIS)などと呼んでいました。ITは意外と歴史の浅い言葉なのです。ITという言葉が一般的になったのは、森首相が国家戦略としてのe-Japan戦略を掲げ積極的な広報活動を行っていた時期でしょう。森首相はITを「アイティー」ではなく「イット」と発言して話題になりましたが、それほど一般的な言葉ではなかったのです。
ICTを多用しているプレイヤーは?
当時のe-Japan構想は、世界最先端のIT国家になる事が基本目標でしたが、内容はインターネット社会を支える超高速ネットワークインフラ、つまり通信ネットワークの整備が中心でした。
ここで、はっきり申し上げたいのは、ICTのCが意味するものは決してネットワークではないということです。実はICTという言葉を多用しているのは、通信キャリアです。e-Japan構想でお分かりの通り、ネットワークはITの重要なファクターの一つであり、ネットワークの意味はすでにItに含まれているのです。ITというとコンピュータシステムやインターネットのイメージが強く、「置いていかれた感」を持った通信キャリアがイメージとしてネットワークをイメージさせやすいICTという言葉を積極的にアピールしているというのが実情でしょう。実際、通信系プレイヤーが主張するICTに目新しいものがあるわけではありません。通信キャリアとしてはネットワークを連想させるCをITと結合させたICTによって、取り残されたITの領域に入っていくきっかけにしたいという強い思いがあり、これがICTの言葉を普及させる原動力となったのでしょう。通信キャリアにとって事業領域の拡大の可能性を示唆するICTは、IT<ICTなのです。
しかし、Cをネットワークと定義する限り、システム・インテグレータにとってIT=ICTであり意味はほぼ同じになってしまいます 。なぜなら、コンピュータシステムにおいてネットワークは、1964年に1台の高額なコンピュータを複数の人が使うTSSが登場してからずっと必須のものだったからです。