VMWareは9月16日、仮想化をテーマとしたイベント「VMWorld 2008」を米国ラスベガスにて開幕した。7月に同社の新CEOに就任したPaul Maritz氏が基調講演に立ち、今後登場する予定の3つの分野の製品や方針について語った。
その3つとは、データセンター内のクラウド化を実現する「Virtual Datacenter Operating System」(VDC-OS)、業界全体でクラウドサービスを促進させるための「vCloud Initiative」、クライアントの仮想環境を向上させる「VMware View」だ。
VDC-OSは、「コンピュータリソースをクラウドのように使う世界を実現するため、まずデータセンターをクラウド化する製品だ」とMaritz氏。これは、現在同社が提供するデータセンター用ハイパバイザー「VMware ESX」が進化した形で提供され、アプリケーションを管理する「Application vService」、インフラを管理する「Infrastructure vService」、そしてVDC-OSそのものを管理する「Management vService」で構成される。
Application vServiceでは、仮想マシンのセキュリティをより強化するVMsafe機能や、ダウンタイムなしで仮想マシンに仮想CPUやメモリを追加するHot add機能などが提供される。Infrastructure vServiceでは、ストレージをより有効活用できるvStorageや、仮想ネットワークの設定を簡素化するvNetwork Distributed Switchなどが提供される予定だ。
Management vServiceでは、これまで同社が「VMware VirtualCenter」として提供していた仮想化環境の管理製品を「vCenter」とし、アプリケーションのレスポンスタイムを監視してパフォーマンスレベルを最適化するvCenter AppSpeedや、仮想マシンの現状の性能だけでなく未来の性能までを予測しリソースの最適化を実現するvCenter CapacityIQなどの機能が追加される。
Maritz氏が2点目として紹介したのは、vCloud Initiativeだ。Maritz氏は「クラウドコンピューティングを提供するためのツールは、(VDC-OSにて)VMwareが提供できる。ただし、実際にクラウドサービスを実現するにはVMwareの力だけではできない」と述べ、業界のさまざまなベンダーと協力した上でクラウドサービスを実現することの重要性を強調した。
そのためVMwareでは、APIを公開するなどして、協力ベンダーがVMwareのインフラを活用した仮想化環境を構築する材料を提供する。Maritz氏は「すでに100社以上のベンダーがこの動きに賛同している」と述べる。
VDC-OSやvCloud Initiativeは、データセンターのクラウド化を目指したものだが、最後にMaritz氏が紹介したのは、クライアント環境を仮想化するための未来のビジョンだ。現在VMwareでは、データセンターからデスクトップを管理するシンクライアントインフラ「Virtual Desktop Infrastructure」(VDI)を提供しているが、これが今後機能強化され、VMware Viewと名称を変えて登場する。
現在デスクトップ環境で起こっているジレンマとしてMaritz氏は、「シンクライアントかシッククライアントか、モバイルを使うべきか、WindowsかMacのどちらを使うべきかなど、端末の選択肢は山のようにある。一方でユーザーは、自分の情報をさまざまなデバイスで、自分の好きなように、リッチな環境で使いたいと考えている」と述べる。VMware Viewでは、デバイスやOSなどにとらわれることなく、ユーザーが自分の好きなアプリケーションを自由に使える環境が実現できるという。
データセンターソリューションの拡充からクライアント環境の強化まで、さまざまな製品を発表したVMware。これらの製品は、2009年にも登場する予定だ。