シマンテックは12月3日、インターネット上のアンダーグラウンドエコノミー(闇経済)について解説した「アンダーグラウンドエコノミーレポート」を発表した。その市場規模は100万ドル(邦貨換算で約1億円)以上という。
レポートでは、インターネット上で盗まれたクレジットカード番号や銀行口座番号とそのパスワード、メールのアカウントとパスワードといった個人情報や、ネットでの攻撃ツール、コピーソフトなどについて調査している。同社のセキュリティテクノロジ&レスポンス(STAR)組織が2007年7月1日から2008年6月30日までの間にアンダーグラウンドエコノミーサーバから集めたデータを基にした。
レポートによると、アンダーグラウンドエコノミーはすでに世界的な広がりを見せ、盗まれた商品や詐欺関連のサービスが常時売買されているという。レポート期間内に同社が観察したアンダーグラウンドエコノミー内の広告が、もし全在庫を完売したとすると、その収益は合計で2億7600万ドルにのぼる。
アンダーグラウンドエコノミーで最も広告の多い商品はクレジットカード情報で、全体の31%を占める。クレジットカード番号の売値は、カード1枚につき0.1ドルから25ドルまでだった。ただし、シマンテックが観察した盗難クレジットカードの利用限度額は平均で4000ドルを超えていたことから、このレポート期間中に宣伝された全クレジットカード情報の潜在的な価値は53億ドルにのぼると同社ではみている。
クレジットカード情報の人気が高い理由は、情報の入手手段や利用方法が多彩で、詐欺に利用できるため。クレジットカードはネットショッピングで簡単に利用できる一方で、取引が完了して納品されるまでネットショップやクレジット会社が詐欺行為を見破って対処することは難しい。なお、クレジットカード情報の販売にはボリュームディスカウントがあり、大量に購入すると値引きや増量といったサービスが受けられるという。
広告数の多い商品第2位は銀行口座で、全体の20%であった。盗まれた銀行口座情報の売値は10ドルから1000ドルだが、その平均残高は4万ドル近い数字となっている。この平均残高と、盗まれて売りに出ている銀行口座番号の平均価格から計算すると、このレポート期間中に宣伝された銀行口座の潜在的な価値は17億ドルにもなる。
銀行口座情報の人気が高い理由は、大金を入手できる可能性と、換金までのスピードにあると思われる。あるケースでは、銀行口座情報を使ってインターネット上の追跡不能な場所に換金されるまで、15分とかからなかったという。アンダーグラウンドエコノミーは地理的に広く分布しており、サイバー犯罪者に多大な収益をもたらしている。
犯罪者は個人同士のゆるやかな集まりから、組織化された高度な集団までさまざまだ。今回のレポートの期間中、この種のサーバが最も多かったのは北米で、全体の45%であった。ヨーロッパ/中東/アフリカは38%、アジア/太平洋が12%、ラテンアメリカが5%となっている。ただし、アンダーグラウンドエコノミーサーバのある実際の場所は、発見されないようにするため常に変更されている。