マイクロソフトは、2009年2月20日より6月30日まで、「法人様向け“Windows 7 先行優待キャンペーン”」を実施すると発表した。キャンペーン期間中は、企業向けのボリュームライセンスプログラムである「Software Assurance」(以下、SA)の内容を拡大し、より多くのユーザーが有利な条件で次期OS「Windows 7」の優待を受けられるようにするほか、既存システムからWindows 7への移行を支援する各種施策を展開する。
SAは、一定期間中に新バージョンのOSがリリースされた場合に、新バージョンへアップグレードするためのライセンスを自動的に得られる権利を商品化したもので、3台以上のPCを保有する法人向けに提供されている。キャンペーン期間中は「Windows Vista Business SA」を優待価格(オープンプライス。実勢価格はOpen BusinessライセンスのSAが2年間で約1万2000円の予想)で提供することに加え、「Windows 7 Enterprise」の開発が完了次第、インストールディスクを無償で先行提供する。
また、通常SAはPC購入後90日以内に購入する必要があるが、キャンペーン開始前にPCを購入したユーザーの救済策として、キャンペーン期間中に限り、2008年8月1日以降に購入したPCにまで対象を広げる。2008年7月31日以前に購入したPCについても、アップグレード権とSAをセットにした商品をキャンペーン期間中は2割引(オープンプライス。実勢価格は約2万8500円の予想)で販売する。
Windows Vistaの法人向けエディションとしては「Business」「Enterprise」「Ultimate」の3種類が用意されていたが、Windows 7では従来のBusinessに相当する「Professional」と、Ultimateに相当する「Enterprise」の2種類となる。Windows 7では個人向けに「Ultimate」も用意されるが、EnterpriseとUltimateはライセンス形態が異なるのみで機能は変わらず、いずれにもWindows 7の全機能が含まれるという。つまり、このキャンペーンを利用すると、「Windows Vista Business」のSAで実質的に上位製品(Ultimate相当のWindows 7 Enterprise)を購入できることになる。
SAはこれまでも提供されていたが、企業ユーザーには、あまり広く認知されていなかったという。今回の施策ではSAという商品を全面に出すのではなく、「先行優待」という形でキャンペーンを展開することで、情報システム部門の「今、Vista搭載PCを買っても、すぐに7が出て投資がムダにならないか」という不安を解消することが狙いだ。マイクロソフトの次期デスクトップOSである「Windows 7」は、一般向けのベータ版が2009年1月9日より約1カ月にわたってダウンロード提供されており、製品版のリリースは2009年第3四半期以降と見られている。
Vista&7を対象にした互換性検証ラボを設置
Windows 7は、Windows Vistaと基本的に共通のカーネルを採用しているため、Vistaから7への移行でアプリケーションソフトの互換性が問題になることはほとんどない見込みだが、Windows XPからの移行には、XPからVistaへの移行の際と同様に何らかの対策が必要になる場合もある。特に企業では、独自開発した業務アプリケーションでトラブルが発生することを防ぐため、現在でもWindows XPを使い続けているユーザーが多い。“7待ち”だったXPユーザーが7の発売に合わせてOSを移行することで、新たな問題が発生することも考えられる。
これに対応するため、マイクロソフトでは、調布に設けている国内開発拠点に5月末まで「Windows Vista/7 互換性検証ラボ」を設置する。Windows Vista、Windows 7ベータ版、各種サーバ等が利用できる検証ルームを用意し、業務アプリケーションの互換性検証が行えるほか、同社の技術者による検証結果の分析などが受けられる。利用は無償だが、申し込み多数の場合は抽選となる。また、ノウハウ蓄積のため、業務内容や個人情報等に触れない範囲で、同社のホワイトペーパー等に技術情報が掲載される可能性があることに承諾することが条件となっている。
そのほか、システム部門担当者、IT技術者、ソフトウェア流通関係者などを対象に、Windows 7やWindows Server 2008 R2、そして今回のキャンペーン内容などを説明するセミナーを、2月20日の東京を皮切りに、全国主要10都市で順次開催する。ウェブサイトでの情報提供の強化やオンラインセミナーの開催なども行う。
マイクロソフト、ビジネスWindows本部長の中川哲氏は、急速な景気の後退を受けて企業のIT投資が冷え込む中「どの企業も支出の削減を図ろうとしているが、事業の合理化、他社との提携、人員の配置転換などが発生すると、社員の持つ情報をうまく流通させることが生産性向上のキーポイントとなる。売上が伸びないからといって単純に情報投資を減らすと生産性は上がらず本末転倒」と指摘。ディレクトリ管理のできないシステムを利用していた企業がWindows ServerとWindows Vistaを導入し、Active Directoryによる適切な管理体制を構築すると、セキュリティ対策、管理とユーザーサポート、ユーザー自身の手間など、合計でPC1台あたり約6万円相当のコスト削減につながるとの試算があることも紹介した。
中川氏は、「古いシステムを使っていると、使い続ける限り、それだけのコストがかかり続ける。初期投資コストの高いシステムが嫌われることがあるが、年間でかかる保有コストがきちんと計算されていないことも多い。こういったところに気付いていただきたい」とし、不況だからこそ、システム管理にかけている不要なコストを削減するためのIT投資を行うべきだと訴えた。