マイクロソフトは4月22日、2008年10月に創設した若手研究者を対象とした支援プログラム「マイクロソフトリサーチ日本情報学研究賞」の受賞者を発表した。同研究賞への応募資格は、日本国内の大学もしくは公的研究機関に所属し、情報学分野および情報学の応用分野で研究活動している博士課程取得後10年以内の研究者(国籍不問)となっていた。
受賞者は、基礎的情報学分野と応用的情報学分野の各1名で合計2名。基礎的情報学分野で受賞したのは京都大学大学院情報学研究科 准教授の五十嵐淳氏。応用的情報学分野で受賞したのは産業技術総合研究所サービス工学研究センター最適化研究チーム 研究員の神谷年洋氏だ。
五十嵐氏の研究テーマは「オブジェクト指向言語理論の研究」で、オブジェクト指向プログラミング言語の型理論の構築とJava言語への実装の研究を行ってきた。一方神谷氏は、「CC Finderコードクローン検出・分析システムの構築」を研究テーマとしており、大規模なソフトウェアでも同一機能は同一コードで効率よく動かせるよう、コードクローン(類似したコード)を検出するシステム「CC Finder」を構築した。
受賞者には賞金400万円と賞状が贈呈されるとともに、世界6カ所のMicrosoft Researchに所属する研究者と交流する機会が提供される。
そもそもMicrosoft Researchとは何なのか。ここは、単にMicrosoftの製品を開発する場所ではない。近未来の世界で実現する技術について基礎研究を続ける研究者約900名が集まった機関だ。米国ではレドモンド、シリコンバレー、マサチューセッツに設置されているほか、英国ケンブリッジ、中国北京、インドのバンガロールにも拠点が置かれている。
世界レベルの研究者と交流することは、日本の研究者にとってもいい機会となる。マイクロソフトでは、「日本の若手研究者の人材育成を支援したい」(マイクロソフト 最高技術責任者 加治佐俊一氏)との思いからマイクロソフトリサーチ日本情報学研究賞を設置しており、「こうした優秀な研究は、情報技術の発展に大きなインパクトを与える。優秀な研究者を支援することで、技術の発展したよりよい世の中作りに貢献できる」と加治佐氏は言う。
受賞者の評価ポイントとなったのは、これまでの実績や将来性、技術の実用性、国際的認知度など。「マイクロソフトの技術への貢献度より、コンピュータサイエンスそのものへの貢献度を重要視した」と加治佐氏。だからこそ、マイクロソフト推奨というわけではないJava言語の研究者も受賞しているのだ。
今回の研究賞は「第1回」となっており、マイクロソフトでは今後も引き続き同研究賞を通じて若手研究者の支援を続ける予定だ。