データセンターの経済性向上へ--ジュニパー、スイッチ/ルータをIBMにOEM提供

渡邉利和

2009-07-23 22:20

 ジュニパーネットワークスは7月23日、IBMとOEM契約を締結したことを発表した。この契約で、IBM Global Serviceはジュニパーネットワークスのイーサネットスイッチ「EXシリーズ」とイーサネットルータの「MXシリーズ」を、IBMデータセンター・ポートフォリオの製品として販売することになる。

 米Juniper Networks上級副社長のDavid Yen氏(データセンター・ビジネスグループ統括マネージャー)は「IBM Global Serviceとは2007年からジュニパー製品について再販契約を締結していたが、“ハイパフォーマンスのネットワーク製品を大規模データセンターに導入することでデータセンターの経済性を高める”というビジョンを両社で共有できたこともあり、両社の戦略的協力関係を引き続き拡大していくことになった」と語った。

David Yen氏 米Juniperの上級副社長でデータセンター向け製品を統括するDavid Yen氏

 また同氏は今回の契約の意義について、「市場のリーダーである両社の協力関係がユーザーに多くのメリットをもたらし、経済性を向上させる」「IBMにとっては製品ラインアップの拡充が実現する」「ジュニパーにとっては販売チャネルの拡大が実現する」――という3点を挙げた。

 さらに同氏は、ジュニパーが進める「Stratus Project」についても説明を行った。Stratus Projectはジュニパーの次世代製品開発プロジェクトだが、IBMもこのプロジェクトに1年以上共同で取り組んでいると言い、Stratus Projectが今回のOEM契約締結の背景となっていることを窺わせた。

 Stratus Projectは、「完全集中型の仮想化データセンター環境をサポートする柔軟性を備える単一データセンターファブリックの構築を目的」とするものだと言う。同氏はStratus Projectを端的に「High Performance, Highly Scalable Data Center Fablic」だとしている。

 現在のデータセンターファブリックは「多階層・樹構造(Multi-Tier Tree Structure)」となっており、このアーキテクチャは規模の拡大を迫られた際には遅延を増大させてしまう可能性が高い上、構造が複雑なために、管理が煩雑で高コストにつくという問題を抱えている。ジュニパーがStratus Projectで実現を目指す次世代のデータセンターファブリックは、現在別個のネットワークとなっているサーバのIPネットワークとストレージのFC-SANを統合し、単一のロジカルスイッチですべてを接続するという。

 明言はされなかったものの、現在規格の標準化作業が進行中の10GbpsのEthernetをベースとしたFCoE(Fibre Channel on Ethernet)をサポートするものと推測される。Stratus Projectでは、FCoEをサポートするネットワーク機器が開発され、それらを仮想的に単一の論理的なスイッチとして扱えるような管理手法が組み合わされるものと考えられる。同氏は「Stratus Projectによって、数十〜数万の10Gポートをサポートし、レイテンシは現状よりも1桁小さくなり、単一のJUNOSによるシンプルな管理が可能になる」とそのメリットを説明している。

 さらに同氏は、ジュニパーが次世代データセンターファブリックに取り組むにあたって競合他社よりも有利な点として、「ジュニパーはハイパフォーマンスネットワーク製品の専業ベンダーであり、他のサーバ/ストレージベンダーやネットワーク管理ソフトウェア製品ベンダーと競合することなく協業関係を築ける」こと、「ジュニパーには、現在の不完全なデータセンターファブリックのアーキテクチャを継続することに関する利害関係はないため、過去のしがらみを断ち切って次世代アーキテクチャに移行できる」ことなどを挙げた。

 また、次世代データセンターファブリックを採用するユーザーのメリットとしては、規模を段階的に拡張する場合にも遅延の発生や消費電力の増大といった状況、コストや複雑さが高まるといった問題に直面するせずにすむこと、ファブリック全体が仮想化されることでサーバやストレージの仮想化と組み合わせた柔軟で統合された環境が実現できることなどを挙げている。だが、Stratus Projectは現在も開発が進行中であり、製品化のスケジュールに関しては公表されていない。

図 右側がジュニパーが構想する次世代のデータセンターのネットワーク

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