一方、渡辺社長は、「人の命を大事にする活動に夢を持つ彼を応援する気持ちでした」と話します。スポンサー支援という形式を取らなかった理由については、「自分が支援される立場になった時のことを考えました。スポンサー支援だと、どうしてもスポンサーの顔色を伺うことになり、本当にやりたいことができないのではないかと。彼が夢としている活動全般の仕組み作りにはビジネススキルも必要ですし、『ビジネスノウハウを身に付けながら活動の基盤作りも同時にできる』というかかわり方をする方が、単なるスポンサーとして資金援助する以上に可能性があると考えた」と説明します。「ちょうど弊社も、スポーツ製品の輸入販売という新分野にチャレンジするタイミングだったので、彼に声をかけました」(渡辺社長)
渡辺社長は、優良企業での激務で体調を崩したことがあり、それをきっかけにストレスから来る心と身体の関係に関心を寄せるようになったとのこと。さまざまなな形で「ワークライフバランス」を実現できる会社作りは、社長自身にとっての夢の実現でもあるそうです。
とは言え、経営者の立場から、今までビジネスでの実務経験の少ない人材を雇用し、しかも二足のわらじを履かせることに対し、ちゅうちょしなかったのでしょうか?
「会社にも結果を残してくれる人を、どう見極めるかだと思います。大きな夢でも小さな夢でも、実現するには必ず壁が出てくる。けれど決してあきらめない人、どっちも取ろうというごう慢さを持つくらいの人は、踏ん張りもする。趣味も仕事も、家庭も仕事も、スポーツも仕事も、自分も相手も、どちらかでなく、人生という大きな視野の中でとらえられる人なら、両方を実現しようと努力し、相乗効果も生まれます。そういう人は、会社でも結果を出せる人材と見ています」と渡辺社長。
一方の林さんも、「今までは『スポンサーと契約して資金援助してもらう』という、物々交換のような方法しかありませんでした。今の仕事は、ライフスタイルの提案を含め、新しい商品を日本で初めて広めていくというチャレンジもあり、目指している活動とその普及にも役立つと思っています」と話します。
2009年5月に行われた「全日本ライフセービング・プール競技選手権」は、仕事とスポーツの両立という環境に身を置き始めて最初の出場となりましたが、最も過酷なプール競技と言われる「200mスーパーライフセーバー」種目で林さんは優勝を果たしました。「5連覇」という快挙は、ライフセービングの世界でも注目を集めているそうです。
「練習量の違いなどはありましたが、結果にこだわらなかったことが功を奏した気がしています。仕事と両立できそうだという自信にもつながりました。今後、会社のCSR活動の一環として普及活動を進めるか、自分が力を付けて事業を立ち上げるかは、まだわかりません。ただ、どちらにしても、自分が今どう頑張るかにかかっていると思います」と林さん。現在林さんは、ブレイブボードの本年度目標10万台販売の達成と400店舗の開拓、ライフセーバーとしては次の国内大会と世界大会への出場を目指しているとのこと。「力み過ぎず、仕事も競技も全部自分らしく表現できるようになりたい」と、林さんはすがすがしい笑顔で語ります。
「夢を持つ人材を受け入れる会社」は、まさに「あったらいいな」ですね。ただし、制度や仕組みがあっても、それを活用して結果を出すのは自分自身。渡辺社長の「あきらめない人を選ぶ」という言葉も印象的でした。
それでは、今回はこの辺で! あなたの会社のユニークな制度についての情報も、ぜひお寄せくださいね。
「あったらいいな」を実現する企業:ファイル11 | |
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社名 | ビタミンiファクトリー |
事業内容 | 美容、健康、スポーツ用品の企画、開発、輸入、販売 |
設立 | 2005年11月 |
従業員数 | 正社員3名(その他契約、アウトソーシングなど) |
資本金 | 1000万円 |
本社 | 東京 |