プレゼンに必要なポイント
では、リスナーに響くプレゼンテーションは、どうやって組み立てればいいのでしょうか? プレゼンテーションを考えるには大きく3つのポイントに留意します。その3つのポイントとは、
- 伝えたいことを明確にする(What)
- 伝えたいことを効果的に相手に伝える(How)
- 落ち着いてプレゼンテーションに臨む準備をする
になります。今回は1つ目の「伝えたいことを明確にする」ノウハウについてお話しましょう。
例えば、先ほどのJobsのプレゼンテーションでは何を伝えたかったのでしょうか。もちろん、1台でも多くの人にiPhoneを買ってほしいという思いはあるでしょう。しかし今回のプレゼンテーションでは、目先の売上を意識するのではなく、iPhoneの魅力を伝えたいというのがメインテーマでしょう。その魅力を余すところなく伝え、リスナーをワクワクさせる。ワクワクしたリスナーはiPhoneがどんどん欲しくなり、手に入れた後はその素晴らしさを周りに話さずにはいられないというストーリー。そのストーリーの中で今回のプレゼンテーションは、魅力を最大限にアピールするというのが明確なテーマとなります。iPhoneという商品の魅力と革新性に自信があるからこそのストーリー展開です。
もちろんiPhoneのように恵まれた商品がそこらじゅうにあるわけではありません。通常は、どんぐりの背比べの商品をより売るためにプレゼンテーションをしなければいけないケースがほとんどでしょう。差別化が難しい商品では、ストーリー展開も変わってきますし、プレゼンテーションのテーマもおのずと変わってくるはずです。商品によっては、安さをアピールするプレゼンテーションもあるでしょうし、壊れにくいという耐久性をアピールするケースもあるでしょう。そのような場合は、あまり派手なプレゼンテーションが逆効果になることもあります。逆に、工場でプレゼンテーションを行い、実際の耐久テストのシーンを生で見せるほうが効果的かもしれません。
そういう意味では、購買までのプロセスも頭で何度もシミュレーションを行い、その中でプレゼンテーションの位置づけを再確認することが出発点になるでしょう。いずれにせよ、最終的には商品を買ってもらうことがゴールであるのなら、買ってもらうためにプレゼンテーションで何を伝えるべきか明確にしなくてはならないのです。
プレゼンテーションに臨むとき、意外と目先のスライド作りで頭がいっぱいになっていたりしませんか? そういうケースはだいたい軸がないので何度もやり直しが発生し、何だかよくわからないプレゼンテーションをする羽目になります。そういう経験をされている方、いらっしゃるのではないでしょうか。
スライドを作り始める前に、時間をかけて以下の2点を考えてみましょう。
- 全体の流れの中で、プレゼンテーションの位置づけを明確にする
- その上でプレゼンテーションの明確なテーマを決める
この2点をじっくり考えることが、プレゼンテーションを成功させる秘訣なのです。逆に言うと、この2点が明確になっていない段階でスライドを作ろうとしたり、似たようなサンプルを探してパクろうとしたりという悪しき行動には絶対に出ないよう心がけてください。ぜひ時間をかけてプレゼンテーションのテーマを明確にしましょう。
次回は、伝えたいことを効果的に相手に伝えるためのノウハウをお話します。
Peace out,
Eric

筆者紹介
エリック松永(Eric Matsunaga)
Berklee College of Music、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科(修士)卒業。19世紀の米国二大発明家Graham Bellを起源に持つ米国最大の通信会社AT&Tにて、先進的なネットワークコンサルティングの領域を開拓。その後アクセンチュアにて、通信分野を柱に、エンターテインメントと通信を活用した新事業のコンサルティングをグローバルレベルで展開する。現在、通信業界を対象にした経営コンサルタントとして活躍中。著書に「クラウドコンピューティングの幻想」(技術評論社)がある。
イラストレーター: まつなが みか
つぶやく日本人や音楽にまつわる「人」のイラストを描く。CDジャケット、ショップ、雑誌等で活動中。エリック松永の愚妹。