IDC Japanは11月16日、国内ITサービス市場のベンダーの売上を産業分野別に調査した結果を発表した。調査対象となったのは、金融、製造、流通、通信およびメディア、政府および公共、その他(運輸、医療、サービス業など)の6産業。
2009年3月期のITサービスベンダーの売上げトップ5は、富士通、NEC、日立製作所、NTTデータ、日本IBMの順。これらトップ5のベンダーは、IDCが調査した6つの産業のうち金融、製造、流通、その他の4産業でもトップ5を占めていることがわかった。
トップベンダーが名を連ねている産業の売上ランキングは、金融業界向けサービスがNTTデータ、日本IBM、日立製作所、富士通、NECの順。製造業向けサービスが富士通、NEC、日本IBM、日立製作所、NTTデータの順。流通業向けサービスが富士通、NEC、日立製作所、日本IBM、NTTデータの順。その他産業向けが富士通、日本IBM、日立製作所、NEC、NTTデータの順となっている(下図参照)。
IDC Japanでは、これらのトップベンダーが、金融における共同型システムアウトソーシングや、製造および流通におけるSCM(サプライチェーンマネジメント)ソリューションや物流ソリューションなど、産業分野内で共通して利用できるパッケージやサービスを提供しているケースが多いと分析している。また、グループ会社を通じて国内の広い地域でサービスを提供できることも売上規模につながっているとしている。
売上成長を見ると、規模にかかわらず、景気後退で投資を抑制した製造業の影響が大きいベンダーは業績が悪化した一方で、法改正対応などでIT投資を迫られた保険、クレジットカードなどの金融機関向け案件や、政府の分離調達への調達方針変更を機に案件を獲得したベンダーは売上が伸びたという。
2009年度のIT予算計画についてのユーザー調査結果からは、金融、製造、政府および公共など、トップベンダーの売上の大きな割合を占める産業において、IT予算を削減する意向が強いことが明らかになっており、ITサービスベンダーにとっては厳しい経営環境が続くとIDC Japanは予測している。その一方で、このような市場においても戦略的にIT投資を継続する企業やコスト削減につながる投資を行う企業もあるため、IT投資抑制の程度は企業によって違いがあるとしている。
IDC Japan ITサービス マーケットアナリストの武井晶子氏は、「同じ産業に注力しているベンダーでも、IT投資に積極的な企業を見出し、必要な投資を提案できるか否かで今後の業績には大きな開きがでてくる。ITサービスベンダーには、これらの企業のITパートナーとして、業種や業務の知識やノウハウはもちろんのこと、新たな技術やソリューションをどのように活用するかを提案する能力が求められる」と述べている。