IDC Japanは1月18日、国内ITサービス市場での主要ベンダーの収益性分析結果を発表した。
同社の分析によれば、2008年度の主要ベンダーの国内IT関連事業/ITサービス事業は、不採算案件削減などへの取り組みが功を奏し改善が見られたが、2008年度後半からの急速な国内経済の悪化の影響で営業利益率は悪化すると見込むベンダーが多い状況だという。その中で多くのベンダーにとって2009年度の重要な経営課題は、売上原価や販売管理費の削減、最適化だとしている。
売上原価の改善では、3つの重要課題のうち、不採算案件の撲滅や削減、開発方法論の活用は、数年前から積極的に取り組むベンダーが多く、すでに一定の効果を上げているという。現在ベンダーが注力している事項は、労務費や外注費のコントロールだという。
システムやソフトウェア開発の受託案件が減少している現在、ベンダー各社は、開発内製化や外注先の取捨選択を進めており、固定費化してきた労務費と外注費を変動費に変えることで、経済環境の変化に左右されない強い事業基盤の確立を目指しているとしている。現時点ではグローバルデリバリ体制が整っているIBM、外注コントロールとオフショアリソースの活用が進んでいる野村総合研究所(NRI)が、売上原価の効率化で進んでいると評価している。
販売管理費については、グループ全体の効率化を妨げる、重複した営業体制、個別の開発サポート(拠点)体制などを改善するため、2008年秋以降に富士通やNEC、日立製作所、NTTデータなど、大規模な事業構造改革を実行するベンダーが非常に多くなっているという。一方、IBMやNRI、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、新日鉄ソリューションズ、大塚商会は大規模な改革を予定しておらず、すでに一定の効率化を果たしたものとみている。
その一方で、富士通とNTTデータ、ITホールディングスの規模拡大戦略が目立つという。3社とも既存事業の収益性強化を図っているが、富士通とNTTデータは、グローバル事業の拡大が重要な経営戦略となっている。ITホールディングスは、事業規模を拡大することで事業の安定化と、グループシナジー効果による収益性と競争力の強化を目指しているとしている。
IDC Japanの松本聡氏(ITサービスリサーチマネージャー)は「低迷するIT市場でサービスベンダーが事業拡大と収益力強化を図るためには、『規模の拡大』『先進分野や特化型ソリューションによる差別化』『徹底した無駄の排除』『顧客信頼度の向上』が求められる」と説明している。