GABAが事業を開始したのは2004年6月。これに合わせ、データセンターを中核にしたこのラーニングスタジオネットワークが構築された。「LinuxベースのOSを独自開発し、ウェブベースのコンピューティング環境を実現しました」というのは、OSの開発に直接携わったIT部門 ITインフラストラクチャ課のマネージャー、Dnyandip Kulkarni氏である。
そしてGABAは現在、全国に36校の教室を持つ。そこでレッスンを受け持つ教師は約800人。そして、全教室では約600台のノートPCが稼働している。こうしたITインフラを支えるIT部門のスタッフは20人を超える。レッスンもその予約も、そしてオンラインカルテも含めたあらゆる業務がウェブベースで行われるため、インフラやウェブ、さらにはヘルプデスクも含めこれだけのスタッフが必要となるのだ。
しかしここに至る過程でいくつかの問題が浮上してきた。まず、ノートPCのトラブルだ。よく故障するのである。特にスクリーンとキーボード関連の故障を中心に、600台のうち1カ月平均10台は何らかのトラブルに見舞われたという。部品の交換も当然それなりのコストがかかる。また、ネットワークの信頼性や安定性に問題があることも判明した。さらには、ノートPCから個人情報が漏洩する恐れもある。そこでGABAは、2006年ごろからシステムの再構築を検討する。
システム再構築にあたっての基本的な概念を増永氏は次のように述べている。
「従来どおりの予約システムやオンラインカルテなどのサービスを継続して提供するというスタンスは変わりません。また集中管理されたデータとサービスをウェブ経由で提供するという基本的なコンセプトも同じです。つまりノートPCに関わるコストをどのように削減するのか、そしてシステムの信頼性や安定性をいかに実現するかがポイントになりました」
検討を重ねた結果、Linuxをベースに独自開発した専用OSが稼働することがあくまで基本条件であり、それさえ実現できればクライアント側にハイスペックなPCは必要ないとの判断に至った。ローカルにハードディスクも必要なければ、ローカルで動くアプリケーションも必要ないのだ。結果、ウェブブラウザが動けばいいということで、シンクライアントという結論に達する。シンクライアントはPCに比べ少ないパーツで構成されているため、故障の可能性も当然低くなる。また発熱や騒音も軽減されるため、節電も可能だ。
「どのタイプのデスクトップ仮想化を選びますか?--それぞれのメリット、デメリット」という解説記事にある通り、シンクライアントをベースにしたシステムは、ターミナルサーバ方式、仮想PC方式、ブレードPC方式の3つに大別される。しかし、GABAのシステムは「いずれにも該当しない」(Williams氏)とのことだ。あえていえば「このシンクライアントはインターネットの専用端末」(同)ということである。
「ターミナルサーバ方式、仮想PC方式、ブレードPC方式のいずれにおいても、われわれが求める以上のスペックがあるため、必要以上に高価なシステムとなってしまうのです。そこまでのものは必要ないと考え、違ったアプローチでシンクライアントを使いました。あまりにいろいろなことができるPCだと、そこで個人情報の漏えいなどセキュリティ確保に心配があったため、シンクライアントという形で制限をかけました」(Williams氏)