日本IBMが2月24日に開催した「IBM SMARTER PLANET SEMINAR 2010」では、IBMのクラウド先進事例も紹介され、米IBM、ISV&デベロッパー事業推進 戦略/先進ビジネス部長のDave Mitchell氏と、東京工科大学、コンピュータサイエンス学部教授の田胡和哉氏が登壇した。
パナソニックは30万人規模で「LotusLive」導入
Mitchell氏が最初に紹介したのは、パナソニック向けの事例だ。IBMは、これまでで最大規模の企業向けクラウドコンピューティングを同社に提供した。
パナソニックは2018年までに、エレクトロニクス業界で一番の「環境革新企業」になることを目指すとともに、各地の拠点同士がネットワーク化し、地球規模での最適性を追求するグローバルネットワーク経営や、ITによる一層の競争力強化などを目標としているという。
そのパナソニックに対して、IBMは「LotusLive」を提供した。「LotusLive」は、「ウェブ会議」「ソーシャルネットワーク型コラボレーション」「メール&スケジュール」などで構成されるパブリッククラウドサービスだ。パナソニックは、社内でのウェブ会議、ファイル共有、インスタントメッセージング、プロジェクト管理などに「LotusLive」を使い、グローバルで約30万人の従業員が利用している。同社は低コストで早期にクラウドを構築できたという。
また、南アフリカにある金融事業者のNedbankの場合は、開発、テスト環境の改善、コスト削減、開発期間の短縮などを目標としていた。しかし、クラウド導入以前は、単一のテストには平均で2週間、システム配備に6~8週間ほどを要するなどの課題を抱えていたという。同社は対処策として、プライベートクラウドを容易に導入できるソリューション「IBM CloudBurst」を用いることにした。その結果、プロビジョニングは2週間から2時間に短縮され、全体としては1週間で環境の設定が完了したという。
Mitchell氏は「クラウドは、2012年には660億ドルの市場規模に成長するとの観測があり、パートナーにも大きなチャンスがある」と指摘する。IBMはパートナーを後押しするため「Develop」「Deliver」「Go to Market」を柱とする「SaaS Partner Program」を用意しているという。
「Develop」では、IBMがテスト用クラウドやイノベーションセンターを設け、同社と共にクラウド事業に着手したいパートナーに対し、クラウド上でのソリューション開発を支援する体制を整えている。今のところベータ版だが、2、3カ月後には本格運用される予定という。
「Deliver」は、利用費についてのハードルを低く抑えることを可能にするもので、クラウドで利用できるソフトの課金制度を、時間単位、月単位、さらに利用形態によっては永久ライセンスとして適用するものだという。「パートナーは、事業の状況、段階に応じ、自由にこれらを選択できる。非常に柔軟性に富んだ、リスクの低い料金体系」(Mitchell氏)だという。
「Go to Market」の点では、「SaaS Community」を設け、門戸を開放している。ここでは、仮想的なイベントや、クラウドでできることの青写真などが用意され、クラウドのなかで興味のある要素について、学び、検討することができる。さらに、IBMの製品、サービスを選択することが決まれば、「SaaS Speciaity」という制度があり、サービスの市場投入に向け、IBMの支援を受けられるとした。