投資責任者はまだITを成長の原動力と認識していない--Ovum調査

富永恭子(ロビンソン)

2010-03-10 21:06

 イギリスのDatamonitorグループの調査会社Ovumは3月9日、世界各国のIT投資意思決定者らを対象にIT予算傾向を分析した報告書を発表した。

 Ovumによれば、今年度の世界的なIT支出は世界経済の減速を迎えて以来初めて、やや増加に転じると予測している。IT支出意思決定者に対する調査の結果では、3人に1人が2010年度の予算は増加見込みと回答しているという。しかし、こうした慎重ではあるものの楽観的な見方に反し、最高投資責任者の間では未だITが成長の原動力という認識はなく、2010年は決断の年となりそうだとしている。

 Ovumでは、IT支出に対する投資責任者の意識には、各国および垂直型産業で相違が見られるが、重要な共通項を指摘。そのひとつが、世界経済が回復の兆しを見せはじめたという景況感の高まり。これが2010年度のIT予算立案にポジティブなインパクトをもたらしているという。また、IT支出の予測額と実際の間に認識のずれが広がりつつあることも共通。加えて、支出傾向は地域差が大きいが、垂直型産業全般で景気後退以前のレベルと比較してIT投資が減少したことも共通しているという。

 Ovumによれば、IT支出は基本的に増加傾向にあるが、増加率と減少率がともに1%から5%とわずかだという。また、大多数の企業では、2010年度は予算額に変化がないままとしている。一方、2009年度のIT予算は、多少の減額を予測した投資責任者と、かなりの増額を計画した人との比率に変化が見られなかった。2010年度も「IT予算額に変更なし」という回答はわずかに増加しただけで、全体の42%を占めている。Ovumでは、短期の事業見通しについて確信が持てない状態であるとしている。

 また、Ovumによれば、一般的にIT支出に関する意思決定者は支出傾向の予測に長けており、実際のIT予算支出額との誤差は5%以内に収まるのが通常のパターンだが、2008年の金融危機以降、IT支出に関する予測額と実際の変更額で、認識のずれが拡大しつつあるという。

 厳しい経済環境にありながらも、実際に着手されるITプロジェクトとして、Ovumは既存のシステムやビジネスプロセスの大規模なアップグレードを必要としないシステム変更が選択されるとしている。現在の範囲内で有効性が実証されているシステム変更を、ビジネスモデルの変化に対応して段階的に行う、というパターンが最も多いと思われるとしている。

 Ovumでシニアアナリストを努めるRhonda Ascierto氏は、「この調査データには前向きな姿勢が現れてはいるものの、IT関連支出の回復にはつながっていない。景気低迷のもたらしたマイナス効果は予想以上に大きく、企業にはその対策ができていなかった。そのため、多くの企業では運用コストの削減という形で、短期的に費用を節約することになった。この報告書のデータは、現実に2008年と2009年前半を通じて行われた大幅な予算カットの余波を表すといえるだろう」とコメントしている。

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