富士通は3月25日、同社と社団法人出雲医師会、島根県立中央病院、出雲市、テクノプロジェクトで構成される「いずも医療カード利用推進コンソーシアム」が、家庭や医療機関からウェブを介して診療情報など社会保障関連情報を照会、閲覧できる“社会保障カード”の実証事業を3月23日から開始したことを発表した。期間は7月30日まで。
いずも医療カード利用推進コンソーシアムでは、カードの名称を「いずも医療カード」とし、実証事業参加者へカードを配布する。コンソーシアム関係には3月中旬から、一般利用者向けには参加医療機関を通じ5月中旬から配布する予定だ。コンソーシアム代表は出雲医師会が務める。
今回の実証事業では、いずも医療カードの一般ユーザーは自宅から検査や処方などの診療情報や健康診断情報の照会(参加医療機関の情報に限定)、参加医療機関の一部での外来診療予約などが可能になる。また、仮想データを用いて年金情報の閲覧も試みる。参加医療機関は、被保険者のオンライン保険資格確認、患者の検査や処方などの診療情報や健康診断情報の照会ができる。
今回の中核となるのは、富士通が開発した「社会保障情報基盤システム」で、いずも医療カードによる公開鍵基盤(PKI)認証、SOA基盤技術、ID連携技術、ユーザーの意志に基づいてウェブサイト間でユーザーの属性情報を安全に流通させるディスカバリー技術などを組み合わせている。
実証実験では、医療保険者や医療機関、年金保険者など複数の情報保有機関にわたる情報閲覧、手続きのワンストップサービスを実現するために「マイポータル」サイトが提供される。
診療・健診情報や保険資格情報、年金情報は、プライバシー保護の観点から情報を一元管理せず、中継データベースを介して各情報を参照する。中継データベースにはユーザーのICカード番号と紐づけた各医療機関の診療券番号や被保険者記号番号、基礎年金番号だけが格納されており、これらの詳細情報は、その都度、医療機関や医療保険者が保有する、それぞれのデータベースから関連情報を取得することで、ユーザーに情報を提供する。中継データベースから医療機関や医療保険者、年金保険者が保有するデータベースを参照する際は、「バックオフィス連携」機能による安全な情報連携を実現しているという。
出雲医師会と島根県立中央病院は、医療機関の実証フィールドをそれぞれ提供する。出雲市は出雲市住民向け事業アナウンスを行い、同市職員がカードのユーザーとして参加する。富士通は、認証システムや中継データベース、バックオフィス連携などを開発。島根富士通の従業員がカードのユーザーとして参加する。テクノプロジェクトは、システム面の全体構築管理、アプリケーションなどの開発を担い、地元グループ会社を含めカードのユーザーとして参加する。
この実証事業は、厚生労働省の「社会保障カード(仮称)の制度設計に向けた検討のための実証事業」の一環。社会保障制度における自らの情報の可視化や透明化、住民本人が効率的にきめ細かなサービスを受けられることを目的としている。