多くのIT部門がコスト管理の機会を見過ごしている。特に自社のIT資産についてのコスト管理において、その傾向が強いと言える。本記事では、IT資産の管理ツールを選択する際に考慮すべき事項を紹介する。
IT予算の抑制傾向に歯止めがかかってきているとはいうものの、ほとんどの企業では、運用コストをさらに削減するよう求められていることだろう。あなたは既に、IT資産の統合や合理化に向けた対策を実施しているかもしれないが、資産の管理方法を改善することにより、さらなるコスト削減を実現することができるはずだ。米調査会社のForrester Researchによると、IT資産が全資産基盤の50%を占める企業も珍しくなく、なかには資本支出の80%に及ぶ企業もあるという(「The Forrester Wave:IT Asset Life-Cycle Management」(IT資産のライフサイクル管理)、2009年第2四半期)。
ほとんどの企業は、IT資産の更改に多大なコストをかけているにもかかわらず、そういったコストの無駄をなくすための手段を尽くしているとは言い難い状況にある。事実、Gartnerの推定によると、ソフトウェアのライセンス料金や、ハードウェアの保守費用の最大20%が、もはや使われなくなっている資産に費やされているという(Gartner、「Don't Overlook Opportunities to Save Costs on ITAM」(IT資産管理におけるコスト削減の機会を見過ごすな)、2008年3月)。ほとんどの企業では、IT資産管理(IT Asset Management:ITAM)のための何らかの手順が策定され、ツールの導入も行われているものの、まだまだ資産管理を改善し、コストを削減する余地が残されているケースも数多い。IT部門は、自社の資産やサービスのライフサイクルを全面的に把握するだけではなく、そういったライフサイクルを管理する際のコストや複雑さの削減にも役立つ総合的なシステムソリューションを採用する必要がある。
適切なツールを採用することで、IT部門はリソースに重点を置いたITAMという厄介な作業(検出や追跡、監査、管理)を行いやすくなる。そして、状況を混沌としたものから、企業にとって真に価値あるものにすることも可能になる。しかし、ITAMツールはすべて同じというわけではない。企業がコストを削減し、資産管理の方法を改善するうえで、IT部門は以下の事項を考慮しておく必要がある。
#1:現状を正確に把握する
自社のIT資産を1つ残らずすべて把握することは、既存のハードウェアやソフトウェアに対する投資を最大限に活かすための最初のステップである。IT部門はIT資産すべてを最適化するために、各資産の設置場所や設定、利用履歴を把握しておく必要がある。こういった情報を手にすることで、各資産の真の価値を評価し、コストに見合うだけの価値を企業にもたらしていない資産を排除できるようになるわけだ。
資産の数がごく少数という場合を除き(あるいはITチームに時間的な余裕が潤沢にあるという場合を除き)、IT資産の現状をすべて把握するための手っ取り早い方法は、資産の自動発見ツールを使うというものになる。こういったツールを使用することで、ネットワーク上にどのようなハードウェアやソフトウェア、周辺機器が存在しているのかを把握できるだけでなく、そのハードウェアやソフトウェアが誰に、いつ、どのように利用されたのかも把握できるようになる。これにより、廃棄や再配備、再利用の対象とすべき資産の特定と、そのコストの再割り当ても容易になる。また、最新情報を定期的に収集する作業を自動化することで、資産の変動も把握できるようになる。
#2:プロセス、プロセス、プロセス
企業にはその規模にかかわらず、業務に適合しており、測定可能かつ整合性のある一連のITAMプロセスが必要となる。参考になるベストプラクティスは数多く存在しているものの、「四角い」プロセスを組織に対して「丸く」適用することのないよう注意してほしい。新たなプロセスを導入しても、チームの仕事が楽にならず、目に見える効果も出てこないという場合、人々は以前のやり方に戻ってしまうはずである。
このため、適用するITAMソリューションは、大掛かりな設定作業やコンサルテーションを必要とすることなく、組織固有のプロセスをサポートできるだけの柔軟性を備えていなければならない。また、こういったソリューションは、ユーザーを複雑さでイライラさせることのないような方法で新たなプロセスとして自動化するとともに、実際の生産や日々の管理業務に該当プロセスを組み込めるようにしておくことで、彼らのガイド役になるような容易なものとなっていなければならない。自動的に追跡、測定できるような明確に定義されたプロセスによって、ネットワーク内にあるすべてのIT資産を管理、あるいは把握できるようになるわけである。