アカデミー賞から読み取るアメリカの光と影--エリック松永の英語道場(46) - (page 2)

エリック松永

2010-04-02 08:00

 アメリカは、2001年9月11日の同時多発テロ事件で強烈な喪失感を経験しました。そして国をさらに愛するようになりました。しかし一方で、高まる愛国心が戦争という誤った方向に流れることにもつながりました。イラク戦争はまさにそんな戦争でした。

 しかし今、多くのアメリカ人は戦争を終わらせたいと思い始めているのではないでしょうか。その意思表明が、イラク撤退を掲げた黒人初の大統領であるBarack Obama氏の選出であると私は考えています。日本人にとって戦争は過去の話のようにも感じますが、イラク戦争は過去の話ではなく現在の話です。2010年2月にアメリカ軍はイラクからの撤退を開始しましたが、治安維持と称して多くの兵が現地に残っているのは事実ですし、軸足がアフガニスタンへと移りつつあり、戦争が終わるとは言い難い状況です。

 そして、今この瞬間も映画で描かれている爆弾処理班が、イラクやアフガニスタンで休む暇もなく職務を全うしているのです。こうした背景を知れば、The Hurt Lockerをこのタイミングで発表することの意義と勇気、そして全米がこの作品のOscar受賞に拍手を贈る理由が見えてくるのではないでしょうか。

 英語道場で繰り返し言っていますが、このような文化的背景を理解することは、言葉の習得より重要です。日本人は、自分の国のことを知らないとよく言われます。戦争、宗教、人種など、われわれ日本人には遠いテーマだと思いがちですが、国際人として世界の人とコミュニケーションしたいのであれば、常に意識すべきテーマでしょう。

 Academy Awardsでは、アメリカの影の部分を題材にした作品が多く評価されています。なぜこの作品がノミネートされたのか、なぜ受賞に至ったのか、その理由を考えるだけでも今のアメリカを知る大きなきっかけとなるはずです。この記事で興味を持ったら、まず劇場へ足を運んでみて下さい。そして感じてください。今のアメリカを。

 最後に、Kathryn Bigelow監督の受賞スピーチを英語のまま掲載します。彼女の優しさが伝わる素晴らしいスピーチを、そのまま感じてください。

This really is... There's no other way to describe it, it's the moment of a lifetime. First of all, this is so extraordinary to be in the company of such powerful, my fellow nominees, such powerful filmmakers who have inspired me and I have admired for, some of whom, for decades. And thank you to every member of the Academy. This is, again, the moment of a lifetime.

I would not be standing here if it wasn't for Mark Boal, who risked his life for the words on the page and wrote such a courageous screenplay that I was fortunate enough to have an extraordinary cast bring that screenplay to life. And Jeremy Renner, Anthony Mackie and Brian Geraghty. And, I think the secret to directing is collaborating and I had truly an extraordinary group of collaborators in my crew. Barry Ackroyd and Kalle Juliusson and Bob Murawski, Chris Innis, Ray Beckett, Richard Stutsman and if I could just also thank my producing partners, Greg Shapiro, Nick Chartier and my wonderful agent, Brian Siberell, and the people of Jordan, who were, such a... so hospitable to us when we were shooting.

And I'd just like to dedicate this to the women and men in the military who risk their lives on a daily basis in Iraq and Afghanistan and around the world. And may they come home safe. Thank you.

Peace out,
Eric Matsunaga

Eric
筆者紹介

エリック松永(Eric Matsunaga)
Berklee College of Music、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科(修士)卒業。19世紀の米国二大発明家Graham Bellを起源に持つ米国最大の通信会社AT&Tにて、先進的なネットワークコンサルティングの領域を開拓。その後アクセンチュアにて、通信分野を柱に、エンターテインメントと通信を活用した新事業のコンサルティングをグローバルレベルで展開する。現在、通信業界を対象にした経営コンサルタントとして活躍中。著書に「クラウドコンピューティングの幻想」(技術評論社)がある。TwitterのIDは @EricMatsunaga。

イラストレーター: まつなが みか
つぶやく日本人や音楽にまつわる「人」のイラストを描く。CDジャケット、ショップ、雑誌等で活動中。エリック松永の愚妹。

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