報酬総額1億円以上の社長は8%--役員報酬の個別開示はなぜ必要か? - (page 2)

田中好伸(編集部) 2010年04月09日 16時24分

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 企業に投資する投資家は、経営陣に経営を任せている以上、その経営陣がどのような体制で事業を展開しているのかを詳細に知る必要がある。Enron事件を契機にしたSOX法、その影響を受けた日本版SOX法が要請する内部統制、2006年の会社法は、そうしたコーポレートガバナンス強化というトレンドであり、今回の改正内閣府令による役員報酬の開示も、その流れの一つでしかないのだ。

 そうしたコーポレートガバナンス強化の流れを分かっているからこそ、投資家がほしいのは総額としての経営コストであって、役員報酬を個別に開示する必要はないという経済同友会の言い分も理解できる。しかし、英米の役員報酬の個別開示は、日本よりもっと厳しい。米国の場合、報酬上位5人の過去3年間分について、氏名や役位、固定報酬、ボーナス、株式、ストックオプション、株式以外のインセンティブ報酬プランなどをそれぞれ詳細に開示する必要がある。英国でも、個々の役員について、実支給額やストックオプション、年金、退職金などをそれぞれの明細を明らかにしなければならない。

白石氏 ディレクターを務める白石正人氏

役員報酬ポリシーの策定が求められている

 「強まることはあっても弱まることはない」(プライスウォーターハウスクーパースのディレクターを務める白井正人氏)というコーポレートガバナンス強化の流れにある、今回の役員報酬開示。その中で最も重要なのが、報酬額の算定方法の決定に関する方針だ。

 この役員報酬ポリシーについて、プライスウォーターハウスクーパースは2008年度中に調査している。調査結果では、46%が策定しているが、54%が策定していないという事態が明らかになっている。策定しているという企業でも、ウェブサイトなどで一般に公開している企業は8%、投資家にだけ公開しているのは13%、策定してはいるが公開していないという企業が79%に上る。

 役員報酬ポリシーを策定していない企業は、2010年3月期の有価証券報告書に記載するために今、策定しているところとみることができる。2010年3月期の有価証券報告書という目の前の課題に向けて、過去の報酬決定の慣行や考え方を整理、明文化しなければならない。なかには、コーポレートガバナンス強化というトレンドを踏まえて、2011年3月期に向けて、改めて役員報酬ポリシーを策定するという企業もあるだろう。

 しかし、それにしても役員報酬ポリシーがないという企業は、改めて考えてみると不思議なものだ。日本版SOX法が要請する内部統制は、決算書の“品質保証書”と表現できる。内部統制は、業務現場で一つひとつの業務プロセスに不正がなく、きちんとした正しいものであることを証明するものだ。そのために業務現場では、これまでのやり方が通じず、不便な思いを感じているはずだ。それに対して、役員報酬ポリシーなど存在せず、これまでの慣行だけで役員の報酬が決められているというのは、業務現場から見て不公平と感じてしまうのではないだろうか。

 なぜ役員報酬ポリシーが必要なのか? これは先にも触れた通り、投資家への説明責任があるからだ。投資家に対して、経営コストである役員報酬が合理的なものであることを証明する必要があるわけだ。内部統制が決算書の品質保証書であるのと同様に、役員報酬も合理的に決定されていることを示して、投資家を納得させる必要が企業に求められているのである。

 総額1億円以上もらっている日本企業の社長は10%にも満たない。取締役では1.4%という実態だが、この状況について白井氏は、「日本企業の役員報酬は低い」と指摘している。今後の方向性として「役員報酬ポリシーなど透明性を高めながら、業績連動の比率を高めると同時に高くしていくべき」と主張する。

 その理由として若林氏は「日本企業はグローバル規模でのM&Aを進めている。海外の企業を買収すると、買収先の役員の報酬が日本企業よりも高いというケースが見られるようになっている。そうしたケースでは、買収先の役員報酬を下げるわけにはいかない。そう考えると日本企業の役員報酬をグローバルの水準に合わせていった方が合理的」と説明している。

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