NECは6月23日、ホテルの予約システムや顧客管理システムなどをSaaS形式で提供するホテル総合クラウドサービスを発表した。同日より販売を開始し、2011年1月より提供を開始する。
同社の提供するホテル総合クラウドサービスは、これまでホテルが個別に保有していた宿泊予約システム、宴会システム、顧客管理システムといった業務システムや、デジタルサイネージ、IPを活用した音声サービス(PBX)などを含めたホテルのITシステム全般を、NECのデータセンター内で管理し、各ホテルにSaaS形式で提供するものだ。
NEC 執行役員 兼 流通・サービス業ソリューション事業本部長の中江靖之氏は、「NECは国内大手シティホテルシステムの導入シェアが62%(NEC調べ)と、顧客へのプレゼンスが高く、クラウドサービスにつながるアプライアンスも幅広く取り扱っている。今回のホテル総合クラウドサービスは、流通サービス業向けのクラウドサービス第1弾だ」と述べている。
ホテル総合クラウドサービスは、業務システムの「NEHOPS」と、デジタルサイネージサービス「PanelDirector」、ホテルのIP電話システムの3つで構成されている。
NEHOPSは、宿泊予約システムや宴会システム、顧客管理システムなどの業務システムをサービスで提供する。シングルサインオンにより、PCの画面ですべての業務システムを権限に応じて起動できる。また、宿泊予約システムとインターネット予約システムが自動的に連動するため、宿泊予約システム上の客室在庫がリアルタイムにインターネット上に反映される。
PanelDirectorは、イベント案内やレストランメニューの紹介、ニュースや天気予報などの情報コンテンツを、ホテル内外に設置したパネルに表示する。このPanelDirectorをNEHOPSの宴会システムと連携させ、宴席案内や行灯案内などを表示したり、宿泊システムとの連携で顧客属性に応じた情報を表示することも可能だ。また、「視認効果測定サービス」により、コンテンツを見ている人の年齢層、性別、滞留時間、ディスプレイとの距離などを測定、収集し、コンテンツの評価分析ができるほか、「PanelDirector/FieldAnalyst」を利用して、ディスプレイのカメラ映像から性別や年齢層を推定、ホテル利用者のマーケティング分析もできる。
また、ホテルのIP電話システムのサービスでは、NEHOPSと連携し、顧客システムの情報から宿泊客の属性に応じたエステやマッサージなどのサービス案内をIP対応多機能電話機のディスプレイ上に表示したり、電話機のタッチパネル式ディスプレイ上でエクスプレスチェックアウトをすることなどが可能になる。
NEC 流通・サービス業サービスソリューション事業部長の石井力氏は、「NECは1970年代からホテル基幹業務システムを個別開発しており、長年にわたる経験やノウハウが凝縮された業務アプリケーションをサービスとして提供することになる。このサービスを利用すれば、サーバなどの設置作業がなくなり、ホテル基幹システム環境の構築期間が約70%短縮できる」としている。
サービスの価格は、「100室程度のホテルの場合で、初期費用が約540万〜550万円、月額費用が約25万〜26万円となるだろう」と石井氏。これは、従来のホテル基幹システムを導入した場合と比べて「トータルで30%程度のコストダウンになる」という。
サービスメニューは随時拡充していく。今後は、ホテルの電力や空調システムなどの監視制御を行う環境ソリューションや、セキュリティに関するサービス提供なども予定している。
NECのホテル業界の顧客は、これまで国内の大手シティホテルを中心に約500ホテルというが、「今後このサービスを通じて中堅のビジネスホテルや低価格ホテル市場でのシェアも高めていきたい。また、グローバル展開も開始したばかりなので、中華圏を中心に拡販し、今後5年間で2000ホテルにクラウドサービスを提供したい」(石井氏)としている。