クラウドコンピューティング時代--顧客、ベンダー、政府の権利と義務を改めて考える - (page 4)

文:James Urquhart(Special to CNET News) 翻訳校正:川村インターナショナル

2010-07-07 07:00

第3条:ベンダーのインターフェースはベンダーの所有物である

  1.  ベンダーは、データのアクセスと監視に関して先述したこと以外に、「オープン」なインターフェースや「標準」のインターフェースを提供するいかなる義務も負わない。ユーザー体験を変えるAPI、拡張機能を構築するためのフレームワーク、ベンダープラットフォーム向けの完全なアプリケーションなどのテクノロジは、ベンダーが適切と判断した方法で開発することができる。ベンダーが開発者に対し、アプリケーションをカスタムプログラミング言語で記述することを求め、その言語に難解なデータストレージアルゴリズムと、強力な著作権侵害対策が施された実行システムが含まれていたとしても、それを受け入れるしかない。

     これはビジネス関係における顧客側の権利を完全に放棄するもののように思えるかもしれないが、そうではない。「クラウド」は、テクノロジインフラストラクチャ、プラットフォーム、アプリケーションの市場であるため、顧客は苦労して稼いだお金をどこで使うか決めることによって、自らの権利を行使する。例えば、顧客をプロプライエタリなプログラミングライブラリや実行コンテナに囲い込むプラットフォームベンダーを選択するという決定は、そうしたプログラミングによる囲い込みを支持するという選択である。逆に、移植可能な仮想マシンフォーマットやプログラミングフレームワークを強く求めていくことで、市場は本当の意味でコンピューティングキャパシティがコモディティとなるモデルへ向かうことになる。

     ベンダーにこれほど大きな権力を与える主な理由は、革新を最大限に引き出すためだ。テクノロジの開発方法やリリース方法を制限すれば、市場はテクノロジストが革新を行う方法に制限を加えるリスクを抱えることになる。最終的に「オープン」な市場がほとんどの革新に追いつく(あるいは革新を完全に飛び越えて進む)ことは、歴史が証明している。そして、この現象が起きる速度は、オープンソースソフトウェアによって大幅に加速される。とはいえ、オープンソースなど、何らかの単一の方法によって革新を無理に推し進めることには、起業家精神にあふれた資本家によるリスクをいとわない行動を抑制してしまうリスクが伴う。

  2.  しかし顧客には、法的に可能なあらゆる手段を講じて、任意のベンダーテクノロジの拡張、複製、利用、改善を行う権利がある。ベンダーがクラウド上の仮想マシンの管理用にプロプライエタリなAPIを提供している場合、顧客(このケースでは、「コミュニティー」とも呼ばれる)は当然ながら、そのAPIを使って代替テクノロジの「自社製」実装を試す権利を有している。これは、クラウドプラットフォームの機能、さらには完全なアプリケーションの複製にも当てはまる。ただし、先述したように、法律で認められている範囲に限られる。

     この条項は、特許取得済みのテクノロジや商標登録されたテクノロジの不正使用から顧客を保護するものではない。しかし、ベンダーとサードパーティーは、デファクト・スタンダードのテクノロジの特許使用料を要求しても、もっとオープンなほかのテクノロジにデファクトの地位を奪われるだけだということを認識すべきである。プロプライエタリなインターフェースからクライアントコードを切り離すオープンソースプロジェクトがいくつか登場したことで、顧客がクラウドインターフェースを置き換えることを余儀なくされた場合でも多額の費用が発生する可能性は低くなった。

     クラウドベンダーが自らのコミュニティーを拡大し、自社のプラットフォーム上でコミュニティーメンバーによる革新を促すためにできる最善のことは、プラットフォームを可能な限りオープンにすることだろう。オープンなベンダーは、各々の市場分野における「模範プラットフォーム」となることで、そのプラットフォーム上に「培養皿」のようなものを作り出す。これにより、他社との差別化を図る機能を開発し、成功のための力をつけることができる。保守的なプロプライエタリベンダーは、独力でやっていくしかない。

 これら3つの条項は、新しいネットワークベースのコンピューティング市場において、顧客とベンダーの関係、そして場合によっては政府を含めた3者の関係の基盤となるものだ。この文書が完全なものや最終版だと主張するつもりはない。これらの条項には、いつでも修正や加筆が行われる可能性がある。新しいテクノロジやビジネスモデルの登場を受けて、あるいは単に市場におけるビジネスの現実を反映させるために、新たな条項が加えられることもあり得る。これはコミュニティーの文書でもあるので、ほかのメンバーがそれぞれの立場で文書を修正することも大歓迎だ。

旧版

クラウドコンピューティングの権利章典第1版

クラウドコンピューティングの権利章典第2版

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]