IDC Japanは8月2日、国内ブロックレベルストレージ仮想化市場の予測を発表した。これによると、2009年の国内外付型ディスクストレージシステム市場におけるブロックレベルストレージ仮想化の容量は17.2ペタバイトに達し、前年比2.2倍に増加した。
IDCでは、ブロックレベルストレージ仮想化をその実装手法によって、「ヘテロジニアス・ブロックレベル仮想化」と「エンベデッド・ブロックレベル仮想化」に区分している。ヘテロジニアス・ブロックレベル仮想化は、仮想化機能を持った仮想化コントローラ(アプライアンスや外付型ディスクストレージ)を導入することで、ネットワークベース(FC-SAN、iSCSI-SANなど)の複数の外付型ディスクストレージを仮想化する手法。一方のエンベデッド・ブロックレベル仮想化は、外付型ディスクストレージの筺体に組み込まれた仮想化機能を利用して単一筺体内での仮想化を実現する手法となる。
2009年のブロックレベル・ストレージ仮想化容量17.2ペタバイトのうち、ヘテロジニアス・ブロックレベル仮想化が43.7%、エンベデッド・ブロックレベル仮想化が56.3%を占めた。IDCでは、2008〜2013年のブロックレベル・ストレージ仮想化容量の年間平均成長率は92.4%で、2013年には235.4ペタバイトに達すると予測している。一方、2009年の国内外付型ディスクストレージシステムの出荷容量は、ストレージ投資の落ち込みで前年比14.3%増という低い成長にとどまった。IDCでは、2008〜2013年の外付型ディスクストレージシステムの出荷容量の年間平均成長率を46.3%と予測している。
ブロックレベル・ストレージ仮想化は必ずしも新しい技術ではないが、サーバ仮想化に比べて国内での普及は遅れていた。その要因として、国内企業の保守的な投資姿勢やストレージ仮想化の認知度の低さ、さらにストレージ仮想化の導入コストが比較的高額だったことなどをIDCでは指摘している。しかし、2009年の経済後退に伴うIT投資の大幅抑制を契機に、多くの国内企業でストレージインフラに関するコスト削減と利用率向上、さらに既存資産の有効活用やスモールスタートの実現などに対する要求が高まったとしている。
IDCは、ストレージインフラに関する従来からの投資手法や運用手法に替えてブロックレベル・ストレージ仮想化を導入することで、こうした要求を実現しようという企業が2009年から増加し始めていると説明している。また、ディスクストレージシステムベンダー各社が、エンベデッド・ブロックレベル仮想化機能を搭載した外付型ディスクストレージのラインアップを大幅に拡充したことや、コストを抑えたヘテロジニアス・ブロックレベル仮想化ソリューションを提供し始めたことも、ブロックレベル・ストレージ仮想化市場を活性化させている要因だと分析している。
IDC Japan、ストレージ サーバー HCP PCsグループディレクターの森山正秋氏は「ブロックレベル・ストレージ仮想化は、ストレージに限定した課題解決にとどまらず、サーバ仮想化やクライアント仮想化と連携して国内企業のITインフラの変革を支援することで、国内企業に多くのビジネス価値をもたらす可能性を持っている」とコメントしている。