SAS Institute Japanは8月24日、金融機関を対象にした「SAS IFRS金融商品会計ソリューション」を9月1日から提供することを発表した。
早ければ2015年にも強制適用が始まる見込みの国際会計基準(IFRS)では、現行の日本基準(J-GAAP)と異なりさまざまな変更をもたらすとみられており、バランスシート(B/S=貸借対照表、IFRSでは財政状態計算書)のほとんどを金融商品で構成される金融機関にとって、IFRSの適用は大きな影響を受けるといわれている。SAS Institute Japanが今回発表した新しいソリューションは、メガバンクや地方銀行、保険会社などの金融機関に向けて、株式や債券、デリバティブ取引などの金融商品会計への対応を支援するものになる。
SAS Institute Japanの宮田靖氏(執行役員ビジネス開発本部長兼プロフェッショナルサービス本部長)によると、「金融資産が総資産に占める割合を見ると、三菱UFJフィナンシャル・グループが95%、東京海上ホールディングスが90%、野村ホールディングスが95%以上となっている。日産自動車やセブン&アイ・ホールディングスが40%程度であることを考えると、金融機関における金融商品会計は大きな影響を与えることが分かる」と説明している。
SAS Institute Japanの富田達也氏(ビジネス開発本部RIグループ部長)は、IFRSでの金融商品会計は「(1)分類(2)測定(3)仕訳(4)連結/開示という4つの枠組みでとらえることができる」と説明する。(1)の分類では、金融商品をIFRSの測定区分である「公正価値法」と「償却原価法」の2種に分けることになる。J-GAAPで採用されていた、入手時の価格で計上する「取得原価法」は廃止される。このIFRSの分類では、たとえば債券は償却原価法で計上され(J-GAAPでは取得原価法)、子会社や関連会社の株式も公正価値法で計上されることになる(J-GAAPでは取得原価法)。
分類されたあとの(2)の測定の段階で、公正価値法では、市場価格がある金融商品であれば市場価格を公正価値として用いる「マーケット・アプローチ」、市場価格がない金融商品の場合は、将来キャッシュフローの現在価値や計算モデルを使用して計算できる「インカム・アプローチ」、ポートフォリオを再構成した時に必要なコストから算出する「コスト・アプローチ」の2種類が取られる。
もう一方の償却原価法は、将来の予想信用損失と期限前償還リスクという2つの不確実性を考慮した予想キャッシュフローを活用する。たとえばローン商品であれば、J-GAAPの場合は契約上の元本と利率から生じるキャッシュフローを会計処理することになるが、IFRSでは、貸し倒れリスクもあること、加えて繰り上げ返済もあることを考慮しているためである。IFRSの償却原価法では、たとえばローン商品で約定金利が10%で実効金利が7.6%だった場合、その差となる2.4%が貸倒引当金として計上する必要があるという。