富士通は9月30日、財団法人日本自動車研究所(JARI)が、自動車の衝突シミュレーション用計算機の新システムとして、富士通の「PCクラスタシステム」を10月1日から稼働すると発表した。
JARIは、クルマ社会に貢献することをビジョンとした試験研究機関で、その研究グループの1つである衝突安全グループは、自動車が衝突した際の乗員や歩行者の安全性、傷害メカニズムなどを研究する部門である。同研究グループでは、コンピュータ上で再現した車両や人体を用いて行うシミュレーションと、実際の車両や人体ダミーなどを用いた実験を行い、自動車業界のユーザーに広く研究結果を提供している。
コンピュータシミュレーションは、実際の人体ダミーを用いた実験と比較して多くの情報が得られるため、今後の安全デバイスの改良、開発に活用されることが期待されている。そのため、JARIにおいても、より精度の高い人体モデルの開発が求められており、大規模な自動車の衝突シミュレーションが可能となるコンピュータが必要とされていたという。今回、富士通のPCクラスタシステムが自動車の衝突シミュレーション用計算機システムに採用されるにあたっては、同システムが高精度であり、かつ大規模な衝突シミュレーションに必要な環境を実現できることが評価されたとしている。
新システムは、「インテル XeonプロセッサーX5677(3.46GHz)」を搭載する富士通のブレードサーバ「PRIMERGY BX922 S2」により構成されるLinuxクラスタシステム。ノード間は高速インターコネクトである「InfiniBand QDR」で接続され、高性能な並列環境を実現しているという。主に、非線形動的構造解析ソフトウェア「LS-DYNA」などを用いて、自動車の衝突事故シミュレーションを行うという。
また、新システムの導入により、従来の他社製SMP(対称型マルチプロセッサ)サーバによるシミュレーション計算機と比べ、最大30倍の計算速度を実現。これにより単純な計算コストの削減はもちろん、より現実に近い緻密な人体モデルの開発、従来までの車両単体から、乗員を乗せた車両、大規模な衝突までのシミュレーションが可能となるとしている。
JARIは今後、自動車関連企業と協力して、より精度の高い人体モデルを開発することで、自動車の衝突安全デバイスの改良、開発に貢献し、安全なクルマ社会の形成を目指すとしている。