独SAPがオンデマンド(クラウドサービス)ブランド「Business ByDesign」を発表したのは2007年のことだ。その後は離陸の遅れが指摘されてきたが、2010年2月のCEO交代以来、2人の共同CEOの下でオンデマンド戦略は急速に進展している。
同社が10月に米ラスベガスで開催した年次技術カンファレンス「SAP TechEd 2010」で、オンデマンドマーケティング担当シニアバイスプレジデントのJeff Stiles氏に、SAPのオンデマンド戦略を聞いた。
オンデマンドはオンプレミスの焼き直しではない
創業以来オンプレミスで事業を拡大してきたSAPは、オンデマンドにどの程度コミットしているのだろうか? CEOやCTOなどのSAP幹部はオンデマンドについて語るとき、「ハイブリッド」という言葉をよく使うが、具体的にはどのような図を描いているのか。
「既存のオンプレミスがなくなることはないだろう」とStiles氏。SAPは既存のオンプレミス顧客に対しては、顧客の抱える課題の解決策の1つとしてオンデマンドを進めていく、と続ける。
Stiles氏は「顧客はビジネス上の問題を解決したいのであって、実装のトポロジーや選択肢を最初に考えているのではない」と述べている。先に買収したSybaseの技術をもとに今後強化するモバイルを合わせ、「オンプレミス、オンデマンド、オンデバイス」の3つを連携させることで価値を迅速に提供していくことを狙う。
SAPの顧客は大企業中心だが、中小企業向け市場の拡大にあたり、Business ByDesignはオンプレミスの中小企業向けパッケージ「Business All-in-One」「Business One」とともに重要な柱となる。そのため、Business ByDesignなどのオンデマンド製品は、オンプレミス技術をオンデマンドで提供するのではなく、新しいユーザーをターゲットに一から構築したソリューションとなる。
「オブジェクトモデルやサービスインターフェースなどはオンプレミスの『Business Suite』と大きく異なる」とStiles氏。「共通しているのは、統合プラットフォームの『NetWeaver』を土台とした点で、プロセスは異なる顧客セグメントのニーズに基づいたもの」という。
たとえば「Sales OnDemand」は、Business OnDemandともオンプレミスとも異なり、ビジネスの成果を得るためにチームがどのように協業するのかを設計コンセプトとした。オンプレミスのCRMソリューション上でも利用できるという。また、ビジネスインテリジェンス(BI)のオンデマンド版「BI OnDemand」もオンプレミスのBusinessObjectsと併用し、オンデマンドとオンプレミスとでレポートを共有するといった使い方が可能だ。
「目標はオンプレミスの焼き直しではなく、顧客のニーズにあわせたパッケージの作成と拡張だ」とStiles氏は説明する。