「市場に新製品が投入された場合、日本と他国では新製品の購入動向が大きく違っている。他国では、企業全体で製品を入れ替えることはしなくとも、一部でまずは新製品を使ってみる傾向が強い。一方、日本ではたいてい新製品が出ても他国より数年遅れて導入するケースがほとんどだ」。日本IBM 専務執行役員 システム製品事業担当の薮下真平氏は、同社のシステム製品事業方針説明会にて、日本企業の新製品導入の遅れを指摘した。
薮下氏によると、日本企業は他国に比べ、古いシステムが残っている比率が極端に高いのだという。「日本企業には、3〜4世代前のテクノロジが数多く生き残っている。欧米企業であれば、せいぜい2世代前のテクノロジが残っている程度だ。特に競争の激しい産業では新製品を導入する速度が速い。古い製品は場所も取るし消費電力も高いが、新製品にはさまざまな新しい機能が加わっており、古い製品より間違いなくコストパフォーマンスが高いからだ」(薮下氏)
こうした日本の新製品導入の遅れは他国から見ても異様に映るようで、「日本は生産性を追求する国だと他国から評価されているが、外国人によく言われるのは、新しい製品を積極的に導入すればさらなる生産性向上が見込めるのではないかということだ」と薮下氏は言う。
また、日本では「メインフレームは大昔の古い技術で、現在の世の中には対応していない」と考えるユーザーもいるが、「それは誤解だ」と薮下氏は主張する。例えば、IBMが7月に発表した「IBM zEnterprise」は、メインフレームとオープンシステムを1台で一元管理できるシステムで、ワールドワイドで好調に販売されている製品だというが、「ワールドワイドでの“好調”ぶりと比較すると、日本では“堅調”というレベルにとどまっている」と薮下氏。というのも、同製品をメインフレームと捉えているユーザーが「メインフレームは古い技術」と思い込んでいるためだ。
「zEnterpriseの良さを理解しているユーザーは向こうから製品に飛びついてくるほどだが、メインフレームに対する誤解のせいで一部のユーザーにしか受け入れられていない」と薮下氏は現状を説明し、「製品の良さを伝える努力が必要だ。でなければ“堅調”から脱することができない」と話す。
こうした状況を受け、システム製品事業部では「2011年には総合的コミュニケーション能力を向上させる」という。具体的には、マーケティング戦略を強化するほか、営業開発専門チームや技術部門でも人員を強化し、製品の良さを伝えていくという。また、インフラをソリューションとして提案できるよう、コンサルティングに注力し、プライベートクラウドの構築支援とデータセンター全体のTCOを最適化できるよう支援するとしている。
新製品への抵抗感が強い日本企業だが、薮下氏は「新テクノロジを活用してもらう余地はまだまだ残っている」と話す。日本でも競争力がつくのであれば新製品に対して積極的になるべきだという考えが浸透し始めていることを薮下氏は感じており、「日本企業がグローバルで競争力をつけるための支援は惜しまない」と述べた。