既報の通り、Amazon.com子会社のAmazon Web Services(AWS)が日本にデータセンターを設立した。
世界で5番目となるデータセンター「東京リージョン」の設立、日本語サポートの提供開始、そして日本円での決済対応へ――と、国内でのクラウドサービスの展開を加速させるAWS。Amazon.comでAWS事業を立ち上げ、現在この事業を統括しているAWSのシニアバイスプレジデント、Andy Jassy氏に設立の経緯を聞いた。
AWSが解決を目指した2つの課題
国内で既に数千の顧客ベースを持つAWS(日本法人はAmazon Data Services Japan)だが、顧客の多くは米国(東部および西部)やシンガポールのデータセンターを利用している。この物理的な距離によって「遅延(レイテンシ)」と「国外へのデータ配備」という問題が発生していたが、その解消が国内ユーザーの大きな要望だったという。
「東京リージョンの遅延は1桁ミリセカンド。つまり、どんなアプリケーションであっても、東京リージョンで十分に対応できる」
「AWSを使いたいがデータは日本に置かなければならない、だからデータが日本にあることを確認したいというニーズがあった。日本にデータセンターを設立することによって、それが可能になった」
これらの課題を解決するために東京リージョンが設立されたわけだが、価格設定は相当慎重に決定したようだ。
「AWSのそれぞれのリージョンの価格表を見てもらうと、米国の東部と西部、欧州、シンガポールでだいたい似通った価格を提示しているが、若干の違いを発見できる。その違いは、コスト構造やインフラコストなど、リージョンごとの特性を反映したものだ」
「AWSでは非常に詳しく(日本市場を)リサーチし、日本の顧客にかなり魅力的なものになったと考えている」
日本でのサービス普及は「楽観的に考えている」
また、Jassy氏はデータセンター設立で投資した資金を迅速に回収できると回収できると楽観的だ。
「稼働率が上がれば上がるほど、つまりインフラとしての資産が活用されるほど、迅速に(資金を)回収できる。AWSではすべてのリージョンで迅速に成長してきたため、リターンも迅速に得られた。(日本では)いつからリターンが得られるのか、正確に予測できるものではないが、非常に楽観的に考えている」
この楽観的な考えの論拠とも言えるのが、既に数千の顧客ベースを有することと、日本市場の多様性だ。
「日本の企業規模や産業の多様性が、私を楽観的にさせてくれる要素だ。三井物産やオリンパス、リクルートのような大企業、ERP大手のワークスアプリケーションズやウイングアークのような独立系ソフトウェアベンダーなど、さまざまな企業が東京リージョンの開設を待ち望んでいた」
「日本には既にある程度の顧客数があり、多くの産業がある。東京リージョンの開設によって、今後さまざまな事例が出てくるだろう。日本には多くのテクノロジ企業があり、だからこそ楽観的になれる――サービスをきちんと使って頂けるだろう、と」
また、別の質問への回答でも楽観的な考えを裏付ける根拠が見受けられた。
「AWSが米国や欧州、シンガポール(でのサービス運営)を通して学んだことがある――それは需要が常に我々の期待を上回っていたことだ。そのため、(東京リージョンにおいても)どんな需要でも対応できると考えている」
満を持して発表した東京リージョンは、設立を発表する数カ月前から国内ユーザーが利用を始めていた。「どんな需要にも耐えられるという自信がつくまでは発表しなかった」とJassy氏が述べるように、これからサービスの真価を問われることになるだろう。