IDC Japanは3月9日、国内「Storage as a Service」市場の2009年の売上実績と、2009年~2014年の予測を発表した。これによると、同市場の2009年の売上は208億7700万円、前年比4.9%の成長となった。一方、2010年は経済回復と共に成長率が上昇し、225億800万円、前年比7.8%の成長となる見込みだという。IDCでは、国内Storage as a Service市場の2009年~2014年の年間平均成長率は6.9%、2014年の市場規模を314億円と予測している。
IDCでは、Storage as a Service市場の調査対象を「ハードウェア、ソフトウェアなどのストレージ製品を販売することなく、その利用のみを提供することで対価を得るサービスビジネス」と定義している。主にビジネス用途に使われる、ストレージ利用に対して直接的に対価を得るサービスを取材したもので、宣伝広告などを収入源として無償で提供されているコンシューマー向けサービスは対象としていないという。
2009年の国内Storage as a Service市場は、複数の新規サービスが開始された影響もあり、前年並みのプラス成長を保ったとIDCは分析している。国内で事業歴4年以上の実績を持つサービスでは、宣伝投資やマーケティング活動が減少する傾向が見えたが、事業歴が浅いいくつかのサービスによる販売拡大努力と、新規参入サービスの宣伝活動がユーザー数の増加に貢献し、市場規模を押し上げる役割を果たしたとしている。各種サービスの中で、ビジネスが比較的好調なのは個人向けバックアップサービスで、対照的に企業向けバックアップサービスはまだ十分な数の顧客獲得に課題を残した状況が続いているという。また、2009年から見られた傾向については、国内企業の全般的な支出見直しの影響により、一部のサービスで解約数が増加したが、2010年には落ち着きを回復し、不況以前の低い解約率に戻っているとIDCでは説明している。
またIDCによれば、2009年から2010年にかけて、同市場でビジネスを展開する既存サービスにはクラウドブームが売上への影響を与えた様子は見られなかったという。ただし、Amazonの「Simple Storage Service(S3)」や「Elastic Block Storage(EBS)」に代表されるプラットフォームサービスの利用に伴う新たなストレージサービスに関しては、2010年から本格的な売上が計上されることが見込まれているという。さらに2011年以降には、プラットフォームサービス(PaaS)利用の際に併用されるStorage as a Serviceが国内市場の成長セグメントとなるという。
IDC Japan、ストレージシステムズリサーチマネージャーの鈴木康介氏は「2009年の厳しい経済環境の中で小幅ながらも成長を維持した国内Storage as a Service市場は、経済回復とクラウドサービスの普及に伴い、市場拡大の勢いが徐々に増すだろう。今後は、モバイル環境での生産性向上と、中堅中小企業のデータ保護および事業継続対策の2つが同市場の成長をけん引する顧客ニーズとなると考えられる」とコメントしている。