もう1つデータを見てみよう。以下のグラフは年商500億円未満の中堅中小企業1000社に対して、「IT運用管理に携わる人員体制」をたずねた結果である。専任でIT運用管理を担う部門を設置している割合が半数近くに達するのは年商100億円以上のユーザー企業層であることがわかる。いわゆる「情報システム部門」の設置率という観点では、年商100億円以上でないと50%に達しないというのが実情だ。
このように、中堅中小企業のIT運用管理は少人数かつ兼任の体制がまだ多い。IT関連の専門スキルを必ずしも持たない社員が実業務のかたわらで何とか応対しているというのが実態なのだ。
運用管理システム自体に起因する負担の存在
こうした状況を踏まえ、IT専門スキルを持たない兼任の管理担当者をサポートするのが中堅中小企業向けの運用管理システムである。これによってPC資産の棚卸や環境設定に要する作業など、管理担当者の負担は大幅に軽減された。だが、その一方で運用管理システム自体に起因する新たな負担が生じてきたのである。
以下のグラフは年商500億円未満の中堅中小企業1000社に対し、「運用管理システムにおける課題の有無」をたずね、課題があると回答した企業が挙げた「最も重要な課題」を列挙したものである。
この結果を見ると、「運用管理システム自体の管理に手間がかかる」が最も多く、「運用管理システムを十分に使いこなせていない」がそれに続いていることがわかる。これらの項目は、ソフトウェアやハードウェアといった「モノの費用」に関する課題や、人員を確保できないといったヒトに関する課題よりも多く挙げられている。つまり、運用管理システムを導入したことによってIT運用管理の負担は軽減されたものの、新たに運用管理システム自体に起因する負担が生じたということになる。
この状況は昨今の運用管理システム自体の進化と密接に関係している。
当初の運用管理システムはPCにインストールされた各種アプリケーションの棚卸が主な役割だった。だが、ファイル交換ソフトウェアなどによる情報漏えいに対処するかたちでアプリケーションの導入や起動を制御する機能が加わってきた。さらに、メール送信、USBメモリへのコピー、プリンタへの印刷など、さまざまな経路による情報漏えいを抑止するためのPC操作ログを記録する機能まで備えるようになった。運用管理システムの機能は近年急速に増加していったのである。
PCの操作ログを記録する以上、データベースやファイルサーバなどの格納場所が必要になる。ログはどんどん蓄積されていくので、格納場所がパンクしないように事前の容量計画と日々のチェックが欠かせない。つまり、「運用管理システムのための運用管理」が必要となってしまったのである。
ユーザー企業の「運用管理システム自体の管理に手間がかかる」という回答は、まさにこうした状態を指したものだ。また、機能が複雑化することによって、操作も煩雑になってくる。運用管理システムの管理画面には毎日数多くのアラートが上がってくるが、それらはIT用語で表現されていることも少なくない。ITスキルを持たない兼任の管理担当者は、それを見ただけでは何をどう対処したら良いのかわからない。その結果、「運用管理システムを十分に使いこなせていない」といった状態に陥ってしまうわけである。