IDC Japanは3月28日、2011年における国内EA(Enterprise Application)、BA(Business Analytics)ソリューション市場のユーザーニーズ動向調査の結果を発表した。
これによると2011年1月時点でのEA、BAシステムの導入率は、CRM(Customer Relationship Management:営業支援、マーケティング、カスタマーセンター、コンタクトセンター)が52.3%、ERM(Enterprise Resource Management:財務会計、人事給与、販売管理、購買管理、設備保全管理)が88.1%、SCM(Supply Chain Management、在庫管理、物流管理、生産計画、需要予測)が64.4%、製造管理(生産管理、製造実行、製品ライフサイクル)が57.7%、BA(アナリティクスアプリケーション、BIツール、データウェアハウス)が44.6%だった。
2009年12月の前回調査と比較すると、CRMは3.9ポイントの上昇、SCMは6.1ポイントの上昇、BAは7.1ポイントの上昇となり、市場環境変化、グローバルオペレーションを背景に、企業のIT支出抑制が強い時代においても着実に採用が進んでいることが判明したという。一方、ERMは0.6ポイントの減少でほぼ横ばい、製造管理は1.4ポイントの減少となり、生産の海外委託などによる国内製造拠点の減少が製造システムの導入率の減少に影響しているとIDCでは分析している。
2年以内に導入予定または検討中のEA、BAシステムの機能については、CRMではSFA(Sales Force Automation)、ERMでは財務会計、SCMでは在庫管理、製造管理では生産、製造実行管理、BAではアナリティクスアプリケーションに対するニーズが強かったという。特に、SCMを導入予定または検討中の企業の約76%が在庫管理の導入予定または検討を行っていることが調査結果から示されたとしている。
また、IFRSの対応に関する調査結果から、会計方針や内部統制の準備が先行して進んでいいるが、システム要件については未着手の企業が多いことも判明したという。IDCでは、2011年度中にはIFRS対応に向けIT支出の予算化がなされると見ており、IFRS対応として具体的なIT支出が活発化するのは2012~2013年になると予測している。
EA、BAシステムの導入目的における「グローバル対応」に由来する回答率は、財務会計、販売管理、購買管理では12%前後、SCMでは約17%、製造実行システムの回答率は約33%、製品ライフサイクル管理は約22%、BIツールが約12%だった。IDCでは、この傾向は今後さらに強まる傾向にあり、2011年にグローバル対応を機としたEA、BAシステムの検討が引き続き拡大するものと予測している。
そのほか、今回の調査結果では、会計システムとCRM、SCM、製造管理システムの統合、連携性の強化に対するニーズが強まっていることが分かったという。企業内で、ITが投資ではなく支出(コスト)ととらえる声が強まる中、IT支出の抑制プレッシャーから、保守費用の削減や運用効率改善を目指して、分散調達してきたIT製品を集約する傾向や、スイート型のEA製品に対する注目度が高まる傾向にあるという。また、BAシステムを構成するアナリティクスアプリケーション、BIツール、データウェアハウスの統合化に関する意向は、データウェアハウスと同一ソフトウェアまたは同一ベンダーを望む企業が約72%と非常に高い結果になった。この結果は、データウェアハウス専用サーバやプリビルド型BAシステムに対するニーズが非常に高いことを反映しているとIDCでは分析する。
IDC Japan、ソフトウェア&セキュリティグループマネージャーの赤城知子氏は、「企業経営において会計システムとCRM、SCM、製造管理システムの連携要求の強まりは、BAによって得られる分析を実行するための、柔軟なBPM(Business Process Management)に対する強いニーズが根底に介在している事を表している。製品やベンダー選定においては、保守費用の削減や調達、運用効率改善を目指し、それまで分散調達してきたITベンダーや製品を集約し、事前最適化されたスイート製品やアプライアンス製品の検討が拡大する傾向が強まっている」とコメントしている。