これからの金融サービスのイノベーション
こうしたSmartyPigやBankSimpleの事例から見えてくるのは、これからの金融サービスのイノベーションの形態の一つとして、サービスやユーザーエクスペリエンスのレイヤを担うプレーヤーが、既存の銀行をバックオフィスとして利用していくという新しいパターンの出現だ。
預金者に対する保護や事業としての健全性を担保する銀行と、サービスのイノベーションを得意とするベンチャーが、一緒になってユニークな金融サービスを構築するのである。
金融ビジネスは、一つにはITを活用した装置産業という側面と、顧客に対するサービス産業の側面を持つ。前者については、ITの効率化によって金融ビジネスそのものへ参入してくるプレーヤーによるビジネスのイノベーションがもたらされる。そして、後者については、ユーザーエクスペリエンスを得意とするプレーヤーによって、金融サービスのイノベーションがもたらされる。
いずれも、既存の金融ビジネスにとっては、機会と脅威の両方の意味を持つことになるだろう。しかし、こうした挑戦者の存在が金融ビジネスの価値を高めることは間違いない。
飯田哲夫(Tetsuo Iida)
電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。