従来、オンプレミス(企業内)で導入されたシステムやデータに対する、バックアップ(データ保護)システムも、当然ながらオンプレミスで構築することが前提であった。一方で災害復旧(DR)対策として、バックアップテープの別サイトへの保管や、他データセンターのストレージへデータ複製(レプリケーション)を行っているケースも多く、一定の下地があったともいえる。では、従来の手法と現在普及が進むソリューションについて、理解を深めよう。
バックアップシステムとクラウドの関係
今日のバックアップシステムとクラウドストレージ、あるいはクラウドコンピューティングに関して、利用形態から見た、主なものをまとめると以下の通りだ。
- クラウドストレージを利用
バックアップ先のストレージをオンプレミスのテープやディスクではなく、クラウドストレージを利用する形態。ディザスタ発生後、リカバリ先としてクラウドコンピューティングを利用する場合もある - バックアップサービスの活用
クラウドサービスベンダーが提供するバックアップソフトウェアのエージェントをオンプレミスのシステムに導入する形態。バックアップデータの管理やスケジュール等は、クラウドサービスベンダーによって管理される。クライアントPCや小規模なシステムが初期段階の主だった利用形態であったが、今後規模の拡大やデータ量の増大が期待される - プライベートクラウドでのバックアップ
クラウドコンピューティングを企業、あるいは企業グループへサービスとして提供する形態。IT部門が管理するインフラでは、サーバ仮想化技術が使われることが多く、バックアップに関しても、高い拡張性やパフォーマンスが求められる。また単なるバックアップだけではなく、業務部門等の利用者との間で、サービス品質契約(SLA)の締結や、チャージバックシステムの構築が求められる場合が多い - パブリッククラウドベンダーのバックアップ
上記の3.と似ているが、多数の企業間で利用され、規模も大きくなり、SLAの厳密性やチャージバックシステムの多様性など、より高いレベルが求められる
今回は、国内ユーザーへの普及が進む、クラウドストレージとプライベートクラウドでのバックアップについて、掘り下げてみたい。
クラウドストレージを利用
従来のDR対応に改善が求められている中、ひとつの解決策となるのがクラウドストレージの利用だ。
- テープ運用の見直しに至る主な課題
--増え続けるデータに応じたテープメディアの追加投資
--テープ媒体に対する長期保管に対応する信頼性
--テープ媒体の搬送や管理コスト、搬送に伴うリスク - ディスクベースのレプリケーションの課題
--単一拠点でのバックアップデータ管理に伴うリスク
--待機系サイトの運用コスト(サーバ、ストレージ、ファシリティ、人員)
--回線品質やコストによる地理的な限界
災害が発生した後のリカバリに関して、媒体の品質や回線速度、地理的な影響範囲の想定などを検討すると、より信頼性が高く、地理的な制限を緩和できるソリューションへ見直しが求められている。日本国内では、3月の東日本大震災により、DRシステムの見直しが東日本だけではなく、日本全体で見直されていることだろう。