米カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたSalesforce.comのイベント「Dreamforce 2011」では、米国時間8月31日に行われた基調講演で同社会長兼CEO(最高経営責任者)であるMarc Benioff氏が、企業のソーシャルエンタープライズ化には3つのステップがあると唱えた。そして、Salesforce.comとしてその具体的な取り組みとともに新たなサービスなども示した。
最初にSalesforce.comの画面がスクリーンに映し出された。コンタクトページが以前と変化していて、TwitterやLinkedIn、Facebookの小さなアイコンが並んでいる。Open APIを使って公開されている情報を取り込んでいるのだ。
新しいSalesforceのソーシャルコンテキストについて、Benioff氏は「Twitterでこの人が何をしているのか、何を気に入っているのか、誰とつながっているかといったことなどがすべてわかります。ソーシャルプロフィールが組み込まれているのです。名前や電子メールアドレス、いまどこにいるのかといったことだけではなく、製品ブランドについてどんなことを言っているのか、顧客サービスで何の問題があるのか、モバイルアプリケーションは何を使っているのかなどがわかるのです」と語った。
そして、企業のソーシャルエンタープライズ化の第一段階は、データベースの構築だ。そこで、2010年12月に開催された「Dreamforce 2010」で発表されたクラウドにホスティングするリレーショナルデータベースサービス「Database.com」の新機能が紹介された。Database.com自体は8月31日から一般的に利用可能になり、無料アカウント(データレコード10万、月間のトランザクション5万まで)の申し込みを受け付けている。新機能は「Data Residency Option(DRO)」と呼び、これは利用するデータの参照先を選択できる機能だ。2012年から利用できる予定で、価格などはその際に発表される。Salesforceのデータセンターではなく、自社のデータセンターにあるデータなどを利用することもできるようになった。これは、企業の法令遵守や社会的責任の履行、モラルの高まりなどから、データを扱う際の企業ポリシーがさまざまであることに対応した形。Database.comを利用したいが、Salesforceのデータセンターにデータを預けるのは難しい、といった顧客ニーズなどに応じたわけだ。
次に、企業のエンタープライズソーシャル化の第二段階は従業員のソーシャルネットワーク構築だが、これについては企業向けコラボレーションツール「Chatter」が説明された。Chatterは、企業内で使う非公開のソーシャルネットワークサービスで、プロフィールやステータスの更新、情報の投稿や閲覧(フィード)、グループ設定、ファイル共有などが無料でできる。取引先を参照したりカスタマイズしたりできる有料のChatter Plusもある。Marc Benioff氏は「Chatterこそが従業員ソーシャルネットワークのリーダー的存在です」と語った。
Chatterの新機能には、まず「Chatter Now」がある。2011年の年末頃から、いま誰がChatterに参加しているかどうかのステータスがわかり、チャットができるようになる。また、2012年春頃にはPCなどの画面を共有できるようになる(パイロット版の公開)が、この機能は有料になる見込みだ。
2つめの新機能は「Chatter Connect」。Chatter REST APIを使って、ほかのアプリケーションとChatterを統合することが容易になる。APIはプレビュー版が開発者向けに公開され、一般に公開するのが2011年年末頃の予定だ。また、同じく年末頃にForce.com Labsのオープンソースコンポーネントとして「Chatter for SharePoint」が無料で利用できるようになる。これにより、SharePointからChatterでドキュメントの共有ができる。Marc Benioff氏は「レガシーなシステム、古くて使い勝手の悪いコラボレーションツール、SharePointやLotus Notesともリンクしたいというニーズに応えて提供する」とコメントした。
3つめは「Chatter Inline Filters」で、自分をフォローしている人だけ、顧客のアカウントだけ、ファイルだけを閲覧するなど、さまざまなフィルターをかけることが可能になる。
4つめは「Chatter Approvals」で、休暇取得や人材採用、商品の値引き、プロジェクトの立ち上げなど、さまざまな承認作業をChatterフィード内で行えるようになる。2011年の年末頃から無償で利用可能になる予定だ。
5つめは「Chatter Customer Groups」。Chatterユーザーをさまざまなグループに分類できる機能で、2011年年末頃から無料で利用可能。社内の各組織ごとにグループ分けしたり、社外の顧客をそのグループに招待したりできるようになる。グループ内でメッセージのやりとりやファイルの共有など共同作業ができるが、社外のユーザーはグループにアクセスするだけで、機密情報に触れることはないという。