過熱するクライアント仮想化--アシストの新製品は「価格」が特徴

田中好伸 (編集部)

2011-09-20 16:15

 クライアント仮想化市場が2010年から急速に注目を集めている。技術的には新しいものではないが、市場として注目されるようになったのは、この1~2年のことだ。それだけに市場としてはそれほど成熟しておらず、価格もそれほど“こなれていない”というのが実情だ(クライアント仮想化は一般的にはデスクトップ仮想化と言われるが、ここではアプリケーションの仮想化を含めてクライアント仮想化としている)。

 アシストは先週からイスラエルのEricomが開発するクライアント仮想化関連ソフトウェア群「PowerTerm WebConnect」の販売を開始した。10月以降の出荷を予定している。

 現在クライアント仮想化では、サーバ上に集約されたクライアント仮想マシンにアクセスする仮想デスクトップ基盤(VDI、仮想PCともいわれる)やWindowsターミナルサービス、ブレードPCなどのさまざまな方式があるが、Ericomが開発するPowerTerm WebConnectは、仮想PCとターミナルサービス、ブレードPCという3つの方式を混在させたハイブリッド環境に対応するコネクションブローカ。具体的には「PowerTerm WebConnect RemoteView」と「PowerTerm WebConnect DeskView」、「Ericom Blaze」、「Ericom AccessNow」、「Ericom AccessToGo」で構成される。

図 PowerTerm WebConnectのシステム構成

 ハイブリッド環境に対応するRemoteViewは大規模向け。DeskViewは中小規模向けであり、VMwareやMicrosoft、Oracle、Xenなどのクライアント仮想化基盤ソフトに対応している。

 Blazeはターミナルサービスに使われるプロトコルであるRemote Desktop Protocol(RDP)の伝送パフォーマンスを改善するRDPアクセラレータ。RDP 5/6と比較して10~25倍、RDP 7と比較しても2倍以上の高速化が可能といい、WAN環境やリモート接続時環境でもユーザーの操作感や使い勝手が飛躍的に向上するという。

 AccessNowは、WindowsターミナルサービスやVDIのアプリケーションとデスクトップにアクセスする際のHTML5 RDPクライアントであり、Windowsのデスクトップとアプリケーションにアクセスできる。サーバとウェブブラウザとの間の双方向通信用技術規格「WebSocket」と現在議論が進んでいるHTML規格「HTML5」に対応。ChromeやFirefox、SafariなどのウェブブラウザやChrome OS端末で利用できる。WindowsのほかにMac OS XやLinuxからもアクセスできる。

 もう一つのAccessToGoは、iOSやAndroidのスマートフォンやタブレットから仮想デスクトップや仮想アプリケーションへのRDP接続が可能だ。社内や社外でモバイル端末からのアクセス管理が簡素化できるという。エンドユーザーはターミナルサーバやデスクトップなどへのオンデマンドアクセスを提供できるとしている。

写真 岡田昌徳氏

 アシストの岡田昌徳氏(システム基盤ソフトウェア事業部技術2部部長)はPowerTerm WebConnectについて「WindowsのVDIだけではなく、ターミナルサービスにも対応するとともに、さらにLinuxのVDIにも対応することで、幅広い環境に対応できる」とその優位性を強調する。「統合された管理機能で導入時はもちろん、運用時のコストも大幅に削減できる」とコスト面でもメリットがあると説明している。

 PowerTerm WebConnectの価格は、1000ユーザーがVDIを常時利用するケースではDeskViewのシートライセンスが1000必要であり、総額で744万円、同時利用200人が仮想アプリケーションを利用するケースではRemoteViewの同時ユーザー数200で559万2000円、ブラウザしか互換性がないマルチメディア端末を100人の外交員に配布するケースではAccessNowの指定ユーザー数100で111万6000円という設定になっている(価格はいずれも参考価格)。岡田氏はEricom製品の価格面での優位性を次のように説明する。

「ある調査によれば、クライアント仮想化市場は年率34.8%という高い成長が予想され、2015年の市場規模は8500億円になるといわれ、2015年のクライアント環境の3分の1以上が仮想化されていると見られている。アシストはこれまでクライアント仮想化の導入を400社以上手掛けてきたが、その倍以上の企業が初期コストの高さを理由に導入を断念している」(岡田氏)

 クライアント仮想化に興味を持ちながらも、価格がネックとなって導入を断念している企業に対して、Ericom製品が有力な解決策になり得るとしている。アシストはクライアント仮想化製品としてすでにCitrix製品を取り扱っているが、Ericom製品についてはCitrix製品よりも多くの企業を対象にしている。

 アシストでは現在、従業員が利用する業務用PC約800台と更新予定のサーバをWindowsなどからUbuntuに年内に切り替えることを予定しており、各アプリケーションをUbuntu環境でも利用できるようにするために、PowerTerm WebConnectを自社で利用する予定という。こうした社内の導入経験なども技術支援サービスに生かしながら、PowerTerm WebConnectの販売目標を2013年3月末までに50社と設定している。

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