日本インフォア・グローバル・ソリューションズは10月25日、同社の新しい製品ブランド「Infor10」を発表した。Infor10は業界に特化したアプリケーションの統合と消費者向け製品と同等の使いやすさを目指している。
Oracleで共同社長を務めていたCharles Phillips氏は2010年10月に米Infor Global Solutionsに入社し、現在Inforで最高経営責任者(CEO)を務めている。InforのDean Hager氏(マーケティング&ストラテジー担当エグゼクティブバイスプレジデント)によると「Phillips氏の入社以降、開発人員を約100人増加して、業界特化を深めていく」という方向に変わったという。
Hager氏は他社の統合基幹業務システム(ERP)パッケージについて「汎用的なERPの時代は終わった」と表現し、「企業を閉じ込めている」と主張する。「たとえば東京の金属加工業と米の病院では共通するものは何もない」とし、「アプリケーションは業界の目的別に特化しなければならない」と強調している。
現在主要なERPパッケージとして「SAP ERP」や「Oracle E-Business Suite」があるが、これらは同じソフトウェアを基盤として、その上に業界ごとのテンプレートやSIerの各種テンプレートなどを使って導入している。これはERPパッケージにベストプラクティスが蓄積されており、それを活用した方がユーザー企業にメリットがあるという考え方によるものだ。
だが、Inforでは、「競争優位性としてのスピードを顧客企業に届ける」必要があると説明。スピードを重視するために「業界別に特化したアプリケーションを統合する」ことを選択している。そうした背景からユーザー企業の「業界固有の問題に細かな設定なしに対応するだけでなく、費用がかかりリスクの多い導入につながる広範囲のカスタマイズをなくすことを目指した」のが今回のInfor10の背景だ。
Infor10ではERPとして組立製造業向けの「Infor10 ERP Enterprise(旧LN、それ以前はBaan)」、組立/プロセス製造業向けの「Infor10 ERP iEnterprise(旧LX、それ以前はBPCS)」、中小中堅製造業向け「Infor10 ERP Business(旧Syteline)」、7月に買収を完了したLawson Softwareが開発する「Lawson M3 ERP Enterprise」などがあり、サプライチェーン管理システム(SCM)パッケージとして「Infor10 Supply Chain Planning」などがある。このほかに業績管理システム(CPM)や製品ライフサイクル管理システム(PLM)、顧客情報管理システム(CRM)、設備資産管理システム(EAM)といったパッケージソフトをそろえている。
こうした一連のパッケージソフトを、航空防衛、自動車、化学、流通、機器サービス、メンテナンス/レンタル、ファッション、飲食、製造、医療、ハイテク、ホスピタリティ、産業機器/機械類、公共部門といった業界ごとに組み合わせて提供する。たとえば自動車業界向けアプリケーションスイートとしての「Infor10 Automotive Suite」では、ERPとCPM、SCM、EAMなどを組み合わせたものになる。
「現在のアプリケーションは、必要なソフトウェアをSIerに渡して“完成させて下さい”というようなものだ。Infor10では、これをInforが完成させるというものだ。導入にかかる作業をパッケージに組み込むというものでもある」(Hager氏)
これまでは個々のアプリケーションをSIerが構築していたが、業界別のアプリケーションスイートとして提供される。価格も単体で購入するよりも安価になると日本インフォアでは説明している。
これらの業界別アプリケーションスイートは、同社独自の技術である「Intelligent Open Network(ION)」で接続される。IONは、サービス指向アーキテクチャ(SOA)で疎結合の役割を果たすエンタープライズサービスバス(ESB)と同じような仕組みだ。だが「ESBよりも軽量であり、相互接続性を高めるために、特別な知識を必要としないスタンダードなXMLドキュメントで結合させる」(Hager氏)という。
アプリケーションを統合するだけでなく、データを統合することもできるとしている。今回Infor10のブランドが付くアプリケーションは、既存のものをION対応にしたものであり、単純なブランドの付け替えというわけではないという。