企業向けウイルスバスター新版、DLP機能を取り込む--スマホも一元管理へ

田中好伸 (編集部)

2011-11-17 10:16

 トレンドマイクロは11月16日、企業向け総合セキュリティソフトの新版となる「ウイルスバスター コーポレートエディション 10.6」(ウイルスバスター Corp.10.6)を発表した。来年1月27日から受注し、1月31日から出荷する。

 ウイルスバスター Corp.はサーバやクライアントでのウイルス対策やスパイウェア対策、ファイアウォールなどの機能を搭載するエンドポイントセキュリティを確保する。同社独自のクラウド技術「Trend Micro Smart Protection Network(SPN)」を活用したウェブやメール、ファイルが安全かどうかを判定する評価(レピュテーション)も搭載している。

 新版のウイルスバスター Corp.10.6では、Windowsだけでなく、Mac OSやスマートフォン/タブレットで利用されるAndroid、iOS、BlackBerry、Windows Mobileなども管理サーバで一元管理できる。急激に拡大するスマートフォンの普及に対応したものだ。

 新版では性能を向上させている。スキャニング時間とクライアントOSの起動時間が短縮している。

 スキャニングでは、2種類のキャッシュ技術を活用することで効率が向上したという。一つはデジタル署名で安全を確認し、もう一つは一定期間の変更や改変が行われていない、かつ安全が確認されたファイルをスキャニングしないというものだ。

 トレンドマイクロの松橋孝志氏(マーケティング本部エンタープライズマーケティング部プロダクトマーケティングマネージャー)によると、「デジタル署名のキャッシュだけでも30%の短縮効果が得られる」という。クライアントOSの起動では、OS起動時に端末のCPU使用率を監視し、使用率が特定のしきい値を超えた場合に、OSの起動処理を優先するアルゴリズムを搭載している。

 ウイルスバスター Corp.では必要な機能をプラグイン方式で導入できるオプションを提供している。新版となるウイルスバスター Corp.10.6では、情報漏洩対策オプションが追加されている。情報漏洩対策オプションは、2つの機能で構成されている。

 一つは、USBメモリをはじめとする可搬記録媒体、CDやDVD、ネットワーク端末などをPCに接続することをブロック、許可、書き込みなどを設定できる。特定のメーカーや機種を指定したUSBメモリの使用を制限するといったことも可能だ。

 もう一つの機能は、任意の条件に該当するデータのコピーや送信を制限するというものだ。たとえば、個人名が10人分記録されたExcelファイルをメールで送信しようとすると、自動的にメールの送信がブロックされると同時に、そのことがエンドユーザーに警告されるといったことが可能だ。

 この機能は管理者がコンテンツや経路、処理を設定してエンドポイントを起点とした情報漏洩を防ぐことができる。管理者が自由に設定できるが、コンプライアンスとして一般的に求められる法律に対応するためのテンプレートが組み込まれているため、ユーザー企業はテンプレートをベースにすることで、設定の複雑さを軽減できるようになっている。

 この機能は、トレンドマイクロの情報漏洩防止(DLP)アプライアンス「Trend Micro Data Loss Prevention」で活用されている技術の「7割程度を持ってきた」(松橋氏)という。

 外部からの侵入を防御するための技術として脆弱性対策もオプションとして提供される。これは「仮想パッチ」と呼ばれる技術を応用したものだ。

 現在WindowsのPCでは、OSの脆弱性に対してメーカーからネット経由でパッチが適用される。だが、クライアントの脆弱性はOSに限らず、アプリケーションにも潜んでいる。Windowsの脆弱性は、管理者権限で自動化することもできるが、アプリケーションの脆弱性に対するパッチ適用は、なかなか「強制力がない」(松橋氏)のが実情だ。

 仮想パッチは、パッチが当てられていない脆弱性に対する攻撃を検知した時に攻撃をブロックするというものだ。仮想パッチは、クライアントと外部の「通信の中身を見て、不正なものを遮断する」(松橋氏)技術である。

 ウイルスバスター Corp.10.6では「ウイルスバスター コーポレートエディション Plus」と「Client/Server Suite Premium」の2つのラインアップで構成される。標準で提供される機能とオプションで提供される機能で、以下のような違いがある。


ウイルスバスター
コーポレートエディション Plus
Client/Server Suite Premium
クライアントウイルス対策
サーバウイルス対策
スパイウェア対策
ファイアウォール
ウェブレピュテーション
感染時の自動復旧
Mac OS対応
スマートフォン対応
脆弱性対策 オプション
1550円※1
VDI環境での最適化 オプション
1050円※1
統合管理 オプション
880円※1
情報漏洩対策 オプション
3130円※1
オプション
3130円※1
参考標準価格 5240円※1 8350円※1
※1:価格は税別。参考標準価格は1年間のスタンダードサポートサービス料金を含めた1ライセンス(250ライセンス購入時)あたりの使用許諾料金。ライセンス数に応じて割引料金が適用されるボリュームディスカウント制になっている

 トレンドマイクロでは、オプションの拡充を進めていく予定だ。現段階では「電源管理」と「アプリケーションコントロール」のオプション提供を検討しているという。電源管理は、消費電力を抑えるというものだが、3月の大震災の経験から「システムそのものを止められるところまでを検討している」(松橋氏)という。

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