財務経理部門もビッグデータに悩む?--成長機会の識別よりもコスト管理を重視

田中好伸 (編集部)

2011-11-28 16:09

 Accentureの調査によれば、財務経理部門は、企業の成長機会を見据えた大局的な視点を持つことよりも、本来の職務であるコスト管理をより重視しているという。財務責任者の大半は、財務経理部門が自社に新たな価値をもたらす先進的な業務は行っていないと指摘している。

 財務責任者やそのほかの経営幹部を対象にした調査報告書(英語、PDF)では、財務責任者の79%が自社の成長機会を見据えた財務機能の強化を「重要あるいは非常に重要」と回答する一方で、実際に財務経理部門が成長機会を識別できていると回答した財務責任者は34%だったという。

 2012年は市場拡大などの成長戦略に焦点を当てるべきと考える経営幹部は46%、財務責任者は38%だった。それに対して、コスト管理と成長戦略の両方を同様に重要視すべきと考える経営幹部は41%、財務責任者は36%。それ以外の経営幹部や財務責任者はコスト管理に重点を置くとしている。

 自社の最高財務責任者(CFO)が「積極的に財務戦略の指揮を執っている」と答えた財務責任者は49%となっており、財務経理部門が他部署と連携して業務を行っていると回答した財務責任者は45%にとどまっている。こうした弱さを認識して、54%が改善に向けた取り組みを進めていると回答している。こうしたことからAccentureは、大半の財務責任者は、財務経理部門が自社に高い付加価値をもたらす先進的な業務は行っていないと説明している。

 日本に限らず世界中で法規制の改正や市場の絶え間ない変動が続いているが、財務管理者が直面する大きな課題のひとつは、財務機能を高度化するための十分な財源を確保できないことにあると、財務経理部門以外の経営幹部の約3分の1が回答している。

 財務責任者の78%は、法規制への対応が「重要または非常に重要」と考えているにもかかわらず、その対応を積極的に行っていると回答した財務責任者は半数以下(48%)にとどまっている。このことについてAccentureは、財務機能に対する財源不足の表れと考えられるとしている。

 絶え間ない市場の変動への対応策としては、67%がコスト管理、66%がリスク管理、55%が予算管理・財務予測の高度化に取り組んでいる。だがバランスシートの最適化を実施しているのは40%にとどまり、高度なモデル技法を活用しているのは30%、市場変動に対応するために財務経理の組織編成や人材育成に注力しているのは37%にとどまっているとしている。

 財務責任者は増大するデータ量と人材不足への対応も大きな課題と認識している。それが事業活動の支援を妨げていると可能性があるという。

 財務責任者の40%がデータ量の増大、データ間の不整合、データ活用の複雑化が財務経理部門にとって課題になっていると回答。このことから財務責任者の55%が業績管理高度化のための予測精度向上、49%がより強いキャッシュフロー管理、40%がタイムリーな意思決定に役立つ指標や分析値を含む、最新の業績値の可視化が必要と考えている。

 人材不足については、36%が財務担当の能力開発と業績向上のために新たなプログラムを実施する計画があると回答している。取り組みは多岐にわたり、最も多く挙げられた施策は、他社と比較して競争力のある給与と福利厚生(62%)、個人の成果に紐付いた報酬体系(60%)になっている。

 Accentureの財務経営管理グループのマネイジングディレクターを務めるPaul Boulanger氏は「人材不足とデータに関する課題こそが財務経理部門の企業価値向上への取り組みを複雑にしており、そのことを財務責任者は認識している」と説明している。

 その上でBoulanger氏は「財務責任者以外の経営幹部が財務機能の足かせ要因は財源不足によるものだと認識でき次第、CFOは、事業活動を支援し、成長戦略や法規制、市場変動により柔軟に対応できるよう、財務経理部門の能力開発のための財源確保にあたるべきだ」とコメントしている。

 調査は、売り上げ10億ドル以上の世界各国14業種の企業を対象に1~8月に3項目で構成される2度のオンライン調査を実施。一つの調査は財務部門の管理職を対象に530人を超える回答を得ている。そのうち、4分の1以上がCFOという。もう一方の調査は、約300人の財務部門以外の経営層に対するものであり、回答者の80%以上が最高経営責任者(CEO)や最高執行責任者(COO)、最高情報責任者(CIO)。CFOやCOOへのインタビューを通じて得られた情報も調査データに盛り込まれているとしている。

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