日本企業で活用されるアプリケーションポートフォリオは、技術上・ビジネス上という2つの観点から見て、米国・欧州と比較すると、パフォーマンスが最も低い――。アクセンチュアの調べで、日本企業のIT部門にとって残念な事態が明らかになっている。
同社はこのほど、2005年から行っている「ハイパフォーマンスIT調査」の2008年版を公表した。この調査は、日本市場を含むグローバル企業を対象としたもので、企業や組織にとって不可欠なIT機能に対する投資とその導入プロセスをどのように管理しているかを明らかにするという目的を持っている。
責任を負うのは事業部長
調査では「IT支出や投資に対する事業価値を保証する責任を誰が実質的に負っているか」を聞いている。これに対して、「最高経営責任者(CEO)」と答えたのが日本で26%、米国13%、欧州17%という結果に。逆に「最高情報責任者(CIO)/最高技術責任者(CTO)」と答えたのが日本で30%、米国70%、欧州67%となっている。ユーザー部門の代表者である「事業部長」と答えているのが日本42%、米国15%、欧州13%となっている。
この調査結果は、企業の情報システムが業務アプリケーションごとに構築されてきたという歴史を反映していると分析できる。あるいは、日本企業の場合、情報システムが業務ごとに個別最適化されていて、企業としては全体最適化されていないという現実をも表しているとも言えるだろう。
米国・欧州と日本とで対照的な結果となっているが、アクセンチュアのシステムインテグレーション&テクノロジー本部テクノロジーコンサルティング統括エグゼクティブ・パートナーの沼畑幸二氏は、「日本では、CIOやCEOとともにユーザー部門の事業部長がIT投資に対する事業価値を保証する責任を負うのに対し、欧米では専らCIOがこの任に当たる」と説明している。
新規テクノロジ採用の割合が低い
事業部長がIT投資に対する責任を負うという傾向の裏返しなのか、日本企業では、サービス指向アーキテクチャ(SOA)やリッチインターネットアプリケーション(RIA)、ビジネスインテリジェンス(BI)、ウェブポータルといった新規のテクノロジを採用する割合が低くなっている。
たとえばSOAの場合、日本が7%、米国40%、欧州39%となっている。エンドユーザーに対してウェブアプリケーションの使い勝手向上をもたらすRIAの採用割合も日本が10%であるのに対して、米国43%、欧州32%となっている。また、業務システムで蓄積されるデータを活用して経営の実状況を分析するBIについても、日本が31%であるのに対して、米国では65%、欧州が70%と、日本の2倍以上となっている。
沼畑氏は、この調査結果を「日本企業は事業部の力が強いことから、SOAや仮想化技術などITの足元を固めるための投資を納得させられない」と説明。事業部門にとっては、たとえば生産のリードタイムを短縮できる、在庫を半減させられる――などのビジネスにとって直接的な効果をもたらすシステムの方が魅力的だからだ。事業部門にとっては、ITを柔軟にするSOAやサーバを集約できる仮想化技術などの新規テクノロジには興味がないと指摘できるだろう。
何がSOAの導入を阻むのか
システムに柔軟性をもたらすことができるSOAだが、日本企業ではあまり導入が進んでいないという現実も明らかになっている。「来年度におけるSOA導入を現在検討または計画しているか」という質問に対して、日本企業は「現在SOAの導入を進めている」が9%であり、米国34%、欧州37%と大きな差を見せている。「来年度にSOA導入を計画している」とする日本企業は28%だが、米国では55%、欧州49%と、来年度でも大きな違いとなっている。こうした事態は、ForresterやGartnerといったアナリストレポートにおけるSOA適用傾向と同様のものになっている。