クライアントはマルチデバイス時代に突入--日本IT市場予測10項目(前編)

田中好伸 (編集部)

2011-12-30 16:47

 2012年の日本のIT市場は、クラウド、モビリティ、ビッグデータ、ソーシャルネットワークが「第3のITプラットフォーム」となって市場構造に“トランスフォーメーション”をもたらす――。IDC Japanは2012年の日本IT市場でキーとなる技術や市場傾向、ベンダーの動きなど主要10項目をまとめている。

1.日本IT市場は、復興財政支出政策の影響からスマートフォンやITサービス、ソフトウェアが市場を押し上げる

 2011年3月の東日本大震災とその後の一連の事象、円高、欧州連合(EU)の政府債務危機、タイの洪水など経済環境は厳しい逆風を受けた。企業の業績も低迷し、不要不急のIT支出を抑制したことから、2011年の日本IT市場は、多くの製品分野でマイナス成長となり、市場全体もマイナス成長となってしまったと表現している。

 少ない例外となったのが、急速に普及したスマートフォンと(電子書籍リーダーも含む)タブレット、理化学研究所の「京」向けに大量に出荷されたRISCサーバだ(IDCの定義で「京」はスパコンではなくRISCサーバに分類)。スマートフォン市場は前年比で30%以上の増加となり、IT市場全体を3000億円も拡大させたという。タブレット(電子書籍リーダー含む)は前年比で2倍に、RISCサーバは前年比で70%以上の増加となっており、市場全体を約400億円押し上げたとしている。

 だが2012年はプラス成長になると見込んでいる。電力不足や円高、増税、海外景気の減速、タイの洪水の後遺症といった抑制要因があるが、復興財政支出が押し上げる効果もあって前年比2%増のプラス成長になるとしている。2012年の国内のIT市場は、企業がこれまで控えていた製品の刷新やシステム構築を再開し、震災の教訓から事業継続(BC)や災害復旧(DR)にも投資されるという。

 企業のグローバル化に伴って、ITシステムも国内本社と海外拠点をシームレスに連携させることが求められる。ベンダーに求められるものもグローバルで一貫した製品やサービスになると提唱している。海外でのビジネス強化を図るベンダーは、NTTによるDimension Data買収のように、海外ベンダーを買収するケースが増えると指摘、現在の円高状態が、その活動の追い風になると説明している。

2.クライアント市場は“マルチデバイス”時代に入り、モバイル端末が市場の成長を牽引し続ける

 2012年のクライアント市場では、フィーチャーフォンからスマートフォンへの買い換えが進み、フィーチャーフォンユーザーの40%がスマートフォンユーザーになるとみている。2012年のスマートフォンの出荷台数は、PCの約2倍となる2870万台に達して、2012年時点の携帯電話出荷台数の75.7%をスマートフォンが占めると予測している。これまでの“携帯電話とPC”の時代から、情報を共有しながら場所や時間、用途によってPCとスマートフォン、タブレットを使い分ける“マルチデバイス”時代に入ると説明している。

iPadがほぼ独占するタブレット市場で「Kindle Fire」が台風の目になる

 タブレット市場は2011年に大きく伸び悩み、世界市場の1.6%を占めるに留まっていたという。2012年下半期にAmazonのKindle Fireが日本向けに販売開始され、市場が活性化されると予測している。

 だが、Appleが主要なタブレットベンダーであることに変わりはないとしている。Kindle Fireの登場がAndroid陣営にとって追い風となり、2012年にタブレットは日本国内で233万台の出荷になると予測している。

モバイルアプリが増加し続け、クライアントOSシェアの首位競争に影響を与える

 iOSとAndroidのアプリストアにあるモバイルアプリ数は2012年に150万本に達すると予測。PC向けアプリケーション数の約15倍にあたり、増加のペースははるかに早いという。ユーザーベースのダウンロード数で見ると、全世界で850億ダウンロードとなり、2011年の380億ダウンロードから大幅に増加するとみている。

HTML5は2012年にモバイルアプリのプラットフォームとして広く利用され始める

 IDCでは2012年に全モバイルアプリの15%でHTML5を使用すると予測している。HTML5を採用すれば、ネイティブOSに依存せずにマルチデバイス対応のアプリを開発できる。「Write Once, Run Anywhere」がブラウザで実現できることになる。すでにInternet Explorer やFirefox、Chromeといった主要なブラウザがHTML5をサポートしており、急速にモバイルアプリのプラットフォームとしてのシェアを増やしていくとみている。

ビジネス市場でのスマートフォン導入は、2012年にキャズムを超え、成長期に入る

 マルチデバイスの潮流を受け、ビジネス市場でスマートフォンの有効性はすでに実証されつつあるという。2011年には、導入事例が多く紹介され、ユーザー企業は導入に積極的になっており、2011年9月のユーザー調査からみても、兆候は明らかであったと分析している。スマートフォンの導入は、導入障壁の低い小規模企業から始まり、やがて大企業に普及すると考えられ、2012年にキャズムを超え、成長期にはいると予測している。

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