電機メーカートップが成長を誓う 飛躍の糸口つかめるか

大河原克行 2012年01月10日 11時50分

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 一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、2012年1月6日、東京・芝公園の東京プリンスホテルにおいて新年賀詞交換会を開催。また同日、一般社団法人情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)も同ホテルで新年賀詞交換会を開催し、いずれも国内電機大手の社長をはじめ数多くの業界関係者が集まった。

 東日本大震災をはじめとする相次ぐ災害に見舞われるとともに、円高などの影響で厳しい業績に留まった2011年を振り返る一方、2012年の成長を誓う関係者の声が相次いだ。

 JEITA会長の矢野薫氏(=NEC会長)は、「東日本大震災の影響は、電力供給の制約や世界規模でのサプライチェーンの混乱などをもたらした。さらに欧米の金融財政の問題から、日本円が対ドル、対ユーロで歴史的な高値を記録し、加えてタイの洪水被害の拡大で、再び世界的なサプライチェーンの混乱が引き起こされるなど、業界にとっては深刻なことが度重なり、厳しい1年であった」と2011年を総括。

 続けて「2012年の世界経済は、引き続き欧米の金融不安の懸念はあるが、アジアをはじめとする新興国においては一定の影響を受けつつも、電力、道路、通信などのインフラ整備を柱とする成長政策を追い風に、中間所得層の拡大により内需拡大が見込まれる。日本においても、政府による大規模な補正予算により震災復興に向けた動きが本格化するとともに、エネルギー領域を筆頭に、IT、エレクトロニクスと従来の産業が融合するスマート化という新たな産業創出の流れが立ち上がりつつある。2012年は本格的な復興に向けて確実なスタートと加速を同時に果たさなくてはならない。IT、エレクトロニクス産業は、豊かな暮らしの実現、国際競争力の維持、強化に貢献できる。アジアの成長を取り込み、日本の復興と持続的な成長に貢献していくことで、難局を超え、新たな飛躍の年になることを願う」と挨拶した。

 また、乾杯の音頭をとったソニーの中鉢良治副会長は、「地球上の人口が70億人に達する一方で、先進国では少子高齢化が進んでいる。こうしたなかで、JEITA参加企業は環境と医療の分野を焦点に、エレクトロニクスとIT技術を融合させ、諸課題の解決に取り組んでいる。この取り組みが今年は結実する。政府には、日本の国際競争力の強化のためにも、IT製品の関税撤廃をはじめとした自由貿易の推進をしてほしいと期待している」とコメントした。

 CIAJ会長を務めるパナソニックの大坪文雄社長は、CIAJの新年賀詞交換会における挨拶で「2011年はまさに異変ともいえる1年であった。とりわけ東日本大震災は各方面に多大な被害をもたらしたが、各方面の努力で復旧が遂げられつつある。日本の団結力、底力を、日本人自らが認識し、自信と誇りが生まれたともいえる。日本の置かれている状況は決して楽観できるものではないが、今年は必ずや立ち上がるという確信が私には芽生えている」とする一方、「ICT産業界は、クラウドコンピューティングやスマートフォンに代表されるような新技術、新商品にまつわるビジネスモデルの創出による市場活性化が進んでいる。3.9Gや4G、SNSといった新しい技術、サービスによる市場拡大への期待も大きい。だが、新たなビジネスモデルの創出は米国企業がリードしている。さらに製品については韓国、中国メーカーの国際競争力向上が顕著であり、国内市場でも海外メーカーの参入拡大が続いている。日本のメーカーは付加価値が高い製品やサービスを投入することで、国内市場の足場を固め、同時に国際競争力を高めていく必要がある」などとした。

 また、CIAJでは災害に強いネットワークインフラ、クラウドを活用した電子行政と共通番号制の実現による「国の主導による情報通信ネットワークの構築」「グローバル市場におけるICT産業振興策の推進とインフラの海外普及促進」「ICTの利活用促進による新事業機会の創出および新たな街づくり」に関する政策提言をしていくことを示した。

 CIAJの新年賀詞交換会で乾杯の音頭をとった三菱電機の下村節宏会長は「昨年は大変な1年であった。東日本の被災者の不屈の精神や、支援を惜しまぬ人たちをみて、日本の底力を感じた。日本は自信を喪失しかねない状況にあるが、自信を失ってはいけない。世界に向けて新たな価値を創出する力を結集し、底力を発揮していきたい」と語った。

 懇親会会場には電機大手の会長、社長などが来場。富士通の山本正己社長は、「2011年は自然との戦いの1年だったが、2012年は米国大統領戦など人の戦いの1年になると考えている。富士通のキーワードは新生。これまでの経験を乗り越えて、新たに生まれ変わる必要がある。業界全体も新生という言葉が当てはまる一年になるだろう」とコメント。

 シャープの片山幹雄社長は「2012年、シャープは創業100周年を迎えるが、引き続き厳しい1年になるのは確か。一方で、海外でのビジネスをいかに成長させるかが鍵になる。とくに、大型テレビは、北米だけに留まらず、世界規模でこれまで以上に積極的に拡販していく。大型ディスプレイを用いた新たな用途提案もしていく」などと語った。

 さらに、パナソニックの大坪文雄社長は、「課題は山ほどあるが、明るいところにもっと目を向けなくてはいけない。日本全体を見渡せば、環境対応自動車や環境対応の街づくりなど、事業化に向けて踏み出せるものもでてきている。パナソニックも、こうした将来の発展のために三洋電機を買収したといえる」などとした。

JEITAの新年賀詞交換会で来賓の挨拶をする経済産業省の松下忠洋副大臣。CAIJでも挨拶した
JEITAの新年賀詞交換会で来賓の挨拶をする経済産業省の松下忠洋副大臣。CAIJでも挨拶した

 なお、JEITAおよびCIAJの新年賀詞交換会で来賓の挨拶をした経済産業省の松下忠洋副大臣は、「モンゴル大統領を日本に迎えた際、厳しい叱咤激励をいただいた。目覚まし時計がなっています。目を覚まして、起き上がり、行動してください、私たちはそれを待っていますと国会議事堂で演説した。我々には歯がゆいという気持ちがある。バグダッドを訪問した際には、日本は決断に時間がかかること、行動に移すのが遅いことを指摘された。的確にスピーディーに対応する力を失っている。社会システム、政治システムを含めて、根本から作り直す時がきた」などとした。

 また、CIAJの新年賀詞交換会で挨拶した総務省の森田高総務大臣政務官は、「昨年のCEATEC JAPANをみると、エネルギーマネジメントにいかにICTが深く関わっているかを痛感した。情報通信技術の先端に我が国の希望がある。アンゴラ、モルディブでは地上デジタル放送の導入のお願いをしてきたが、テレビ、通信をセットで輸出してほしい、とくに災害時に関する知見に期待する声がある」などと語った。

 新年賀詞交換会という派手やかな場であったことから、電機首脳の顔にも笑顔は見えたが、コメントからもわかるように2012年も厳しい1年になるとの姿勢は共通したものであった。次の飛躍に向けた糸口を掴むことができる1年になるのかが注目される。

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