IT業務のアウトソーシングには多くのメリットがあると考えられるものの、そのメリットを帳消しにしかねないような弊害も存在している。
昨今の厳しい経済情勢のなか、その影響を受けていない企業など存在しないと言ってもよいだろう。多くの企業が部門や従業員、予算の削減を余儀なくされている・・・それもあらゆるレベルにおいてだ。そして、予想だにしなかった決断、すなわちIT部門を廃止してその業務をアウトソーシングするという決断に踏み切った企業も数多くある。IT業務のアウトソーシングは、机上の論理に従うと効果的な対策に見えるはずだ。IT関連のニーズが発生する都度、それに対応してくれるというサービスを提供する企業が実際に存在しているのである。つまり、問題が発生した場合に備えて従業員を待機させておく必要も、彼らの福利厚生費用を負担する必要もなくなるというわけだ。また、コンピュータ技術者を配置しておくことで生じる厄介事に対処する必要もなくなる(これは単なる冗談だ)。
ただしこういったアプローチには、予期せぬ問題が潜んでいる可能性もある。以下では、見過ごしてしまいがちな問題を10個挙げている。
#1:実際のコスト
IT業務のアウトソーシングに伴うコストのなかには、ともすれば忘れがちなコストも含まれている。例えば、業務を委託しているアウトソーシング企業の担当者と自社で打ち合わせする約束を取り付けた場合、その担当者の移動時間も経費として請求されるはずだ。また、アウトソーシング企業の技術者が、あなたの抱えている問題の解決方法を知らず、仕事のなかで見出していかなければならないとしたらどうだろうか?あなたは、こういった費用を支払ってもよいと思えるだろうか?仕事のなかで解決方法を見出していくとひとことで言っても、正社員が行うのと、派遣社員が行うのとでは、受け止め方も違ってくるはずだ。また、アウトソーシング企業から、実際には必要としていないものを勧められるといったケースもある。このようなアップセリングと呼ばれる販売手法は一般的であるものの、不必要なものを勧められることも多いのだ。
#2:時間
急を要するような事態が発生しても、アウトソーシング企業の技術者が自社に到着するのを待たなくてはならない。ここでも移動時間が問題となる。また、アウトソーシング企業側のスケジュールが優先され、あなたの会社の緊急事態への対応が先送りにされる可能性もある。こうなってしまうとアウトソーシング企業に主導権を握られたも同然である。自社のIT部門であればすぐに対応できたはずだと思っても、後の祭りというわけだ。
#3:ネットワーク環境やシステムに関する熟達度
自社内にIT部門がある場合、その部門構成員は自社のシステムやネットワーク環境について熟知している(はずである)。彼らはネットワーク環境やシステムの構築にも携わっていたはずであるため、知っていてしかるべきだとも言える。このため、自社のIT部門の方が、システムを円滑に運用できるだけでなく、緊急事態への対処も速やかに行えるはずだ。もちろん、アウトソーシング企業のIT部門であってもあなたの会社のシステムやネットワーク環境について学ぶことはできるのものの、準備期間が必要となるうえ、ドキュメントが不完全である場合に重大な問題を引き起こすおそれもある。