#4:従業員との関係
こういったことが問題とならない企業もあるかもしれないが、筆者は問題となるケースをいくつも見てきている。同じ社内の人間同士であれば、互いのことをよく知っており、どうすればスムーズにやり取りできるのかも心得ている。しかし、IT業務をアウトソーシングした場合、毎回同じ技術者が派遣されてくるとは限らない。このため、従業員は派遣されてくる複数の技術者と知り合いになり、それぞれの仕事のやり方に慣れていく必要が出てくる。社内に置かれたIT部門の技術者であれば、従業員との信頼関係を育み、確固たるものにしていくことが可能である。もちろんのことながら、社外の人間は従業員との信頼関係を確立できないと言っているわけではない。ただ、社外から技術者を迎えることで、ちょっとした揺れが生じるのである。それが常に問題となるとは限らないものの、クライアントから派遣を断られる技術者が出てくるところまで問題が大きくなったというケースも筆者は実際に見てきている。
#5:法的な責任問題
サードパーティーが介入することで、情報や状況に対する法的な責任が発生するケースもある。このため、企業データや従業員、システムを保護するためのセキュリティ対策が新たに必要となるかもしれない。要するに、あらゆるものが法的な責任問題となり得るわけだ。外付けハードディスクに保存されたデータが誤って社外に持ち出されたり、車に置き去りにされた挙げ句、盗まれたとしても分からないのである。サードパーティーの人間に作業を任せることで話が複雑になり、問題の発生する可能性が高まることになるわけだ。また、社内の人間ほど、自社データの重要性を認識し、それを慎重に取り扱える人材は他にいないという点も付け加えておきたい。
#6:生産性の低下
従業員の使用しているマシンに障害が発生した際、アウトソーシング企業のIT部門が問題を解決するまでの間、その従業員の作業は中断することになる。そういった生産性の低下は高くつく可能性がある。IT部門の作業をアウトソーシングすることで、技術者が現場に赴くまでの時間やスケジュールにまつわる問題が発生し、それらはすべて生産性の低下に直結するわけである。自社でIT部門を保有している場合、現場に赴くための時間はオフィス内を移動する時間だけで済む。また、優先順位にまつわる問題も低減できるはずだ。