企業のバックオフィスにおけるビッグデータ活用の難しさ

Mary Shacklett (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2014-08-27 06:30

 ビッグデータとモノのインターネット(IoT)のおかげで、企業が追い求めてきた、顧客を「全方位」的な観点から理解するという夢がかつてないほど現実的になってきている。

 自社のビッグデータイニシアティブだけでその目標には到達できないという場合でも、クラウドベースのサービスを契約すれば、顧客がウェブ販売のアウトレットにどれだけ頻繁にアクセスしているのかや、どういったものを購入しているのか、その好みといった、顧客に関する「オフプレミス(社外)」のデータを取得できる。またソーシャルメディアをモニタすれば、自社や自社製品についてどのようなことが語られているのかが分かるようになる。企業はこういった情報と、自社のコールセンターやその他の顧客窓口から得た社内情報を組み合わせ、一般的な顧客の行動について包括的な理解を得るとともに、個々の顧客の購入パターンや関連するデータをドリルダウンできるようにもなる。

 しかし、こうした情報を手に入れることで、その情報を成果に結びつけるという責務が発生する。保守的な企業文化がここで表面化してくるのだ。

 以下では、いくつかの「ユースケース」によりその例を見てみたい。


コールセンター

 コールセンターには数多くの苦情の電話がかかってくる。あまりにも多くの電話があると、そのうちのいくつかにはタイムリーな応答を返せず、「待ち時間」の長さにいらついた相手が電話を切ってしまい、それによって放棄呼率(アバンダンレート)が高まってしまう。コールセンターの管理者は月末に月間レポートを受け取り、高い放棄呼率を目にするものの、そのレポートから分かるのは、製品に関するクレームがあったという事実のみであるため、それぞれの状況が2度と起こりそうにないと判断し、それで終わらせてしまうのである。こうした情報からは、不満や失望によって今後は他の店で購入するという意思決定をする可能性のあるコンシューマーのことはうかがい知れないのだ。

睡眠口座

 ある地方銀行が、同行ブランドのクレジットカードの新規契約獲得プロモーションを成功させ、自画自賛していたものの、1年後のカードサービス記録を見ると所有者の半数が同カードを使用していないという事実が判明したという。このような「睡眠口座」の維持によって、同行は多大な時間とコストを無駄にしているというわけだ。カードが使用されていないという事実は、他の何か(その銀行以外)が顧客のカードビジネスを手に入れていることを端的に示す証拠と言える。ATMネットワーク以外から、そしてPOSデータから収集された情報をビッグデータとして整理し、レポートにすれば、個々の顧客がクレジットカードをどこでどのように利用しているのかは分かるだろう。しかし、カードが何故利用されないのかは分からない。その結果、営業部門はカードの利用データが得られた「カードを使用しているユーザー」という部分集合に向けてキャンペーンを打つことになる。そして、カードを使用していない50%以上のユーザーはカードサービス部門のレポート内の片隅に用意された「睡眠口座」というカテゴリに分類され、無視されてしまうというわけだ。

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