IDC Japanは4月2日、国内多国籍企業(日系MNC)のITインフラの調達調達行動に関する調査結果を発表した。調査によると、ITインフラ導入権限は、日本本社に所在する企業が多いが、サービス分野や意思決定プロセスで差異があるという。
対象となったインフラは、ネットワークやデータセンター、ハードウェア、セキュリティ、映像会議など。2011年11~12月に日系MNC合計307社を対象に調査している。「起案→選定→決裁→契約→運用」という意思決定プロセスの権限の所在、インフラへの投資動向、ニーズや課題などを分析している。
国際間ネットワークサービスでは、意思決定プロセスのうち起案や決裁では、日本本社の情報システム部門(IS部門)が主要な権限を持っている。だが、契約や運用では現地法人のIS部門に権限を付与する比率が高まる傾向にあるという。セキュリティシステムや映像会議などでも同様の傾向としている。

だが、サーバやネットワーク機器などのハードウェアは、起案や決裁でも、現地法人のIS部門に権限を委譲している企業が比較的多い傾向にあるという。関税や保守契約の関係から、現地で調達、契約するケースが多いことが背景にあると説明している。
将来的には、起案と運用で本社IS部門の権限を減らし、現地法人のIS部門や地域統括会社の権限を増やす傾向が見られるという。海外拠点の拡大に伴い、日本本社での起案や運用の業務は負担が重くなることから、できる限り現地側に委譲したいという考えがあると分析している。
インフラへの投資意向をサービス分野別に見ると、すべての分野で中国をはじめとするアジアでの投資を増加させる意向を持つ企業が多い傾向にあるという。アジアでの課題としては、IT要員の不足、通信品質の低さ、国や地域ごとに異なる規則やルールへの対応などが挙げられているとしている。
IDC Japanの川上晶子氏(コミュニケーションズリサーチマネージャー)は「日系MNCは、組織や意思決定の特徴やITに対する考え方から類型化した結果、5つのクラスタに分類される」と説明。「海外拠点を中心とした案件の獲得を目指す事業者やベンダーは、ターゲットの優先順位付けと提供体制の構築、次に起こりうる課題やニーズを踏まえた提案、将来的に現地への権限委譲が進むと考えられる意思決定プロセスに着目したアプローチを強化すべき」と提言している。